三つ目は、ポーラ化成工業フロンティアリサーチセンターの原田靖子氏、宍戸まゆみ氏、横田絢氏、井邉彩氏、五味貴優氏、後藤悠氏、楊一幸氏と国際医療福祉大学三田病院放射線診断センターの奥田逸子氏が発表した「太陽光でアンチエイジング-皮下に良い影響・悪い影響を与える光の解明-」である。

紫外線は肌の表皮~真皮に到達し悪影響を与えるため、太陽光そのものが肌にとって悪いものと考えられている。一方、真皮より深部の皮下組織は、たるみなどの老化現象と密接な関係があるなど美容の側面で重要な役割を担うことが分かっているが、太陽光による影響については検討されていなかった。そこでこの研究では、太陽光によって皮下組織がどのような影響を受けるのかの解明に挑んだ。

はじめに日々太陽光にさらされている部位とさらされていない部位において、その皮下組織の形態を比較した結果、太陽光にさらされている部位では、皮膚支持帯(RC:Retinaculacutis、柔らかい皮下組織に存在し、肌が下垂しないよう支える役目を持つ線維構造)の束がほぐれ細くなっていることを明らかにった。さらに、RCが細くなると、皮下組織の粘弾性(ハリや弾力を表す指標)が低下し、たるみの原因となることも分かった。

次にRCがどの光によって細くなるのか突き止める実験を行った。まず皮下組織に到達する太陽光の波長を確認すると、近赤外線と、可視光線の長波長域(以下L-可視光線)の20~30%が皮下組織に届いていることが分かった。これらの光の影響を調べることで、近赤外線が、RCの線維を束ねるタンパクの分解を促進することを見出した。RCの束がほぐれ細くなってしまうのはこのためだと考えられる。一方、L-可視光線は、RCの形成に関わる細胞のエネルギー産生を高め細胞増殖を促進することが判明。つまり、RCの形成に良い影響を与えていると考えられる。実際に、近赤外線をカットしL-可視光線の透過率が高いクリームを連用すると、肌の粘弾性が高まることも見出した。