ポーラ・オルビスグループが発表した四つの研究成果
ポーラ・オルビスグループは、四つの研究成果を披露した。
まず、ポーラ化成工業フロンティアリサーチセンターの濵中祥弘氏、黒住元紀氏、水越興治氏、静岡大学大学院光医工学研究科の庭山雅嗣氏は「皮下組織における酸素状態は柔らかく弾力のある肌を手に入れる鍵である」を発表した。
肌のもちもちとした弾力(肌の粘弾性が高い状態)は、年齢とともに失われていく。このもちもちした弾力は、表皮の下側にある真皮と、真皮の奥に位置する皮下組織によるものと考えられるが、皮下組織の影響についてはよく分かっていなかった。しかし、皮下組織は真皮の何倍も厚いことから、肌の感触に大きく影響すると考えられる。そこで、皮下組織の粘弾性について研究を進めたという。
はじめに超音波を使った装置を用い、126名の頬の粘弾性について調べた。その結果、年を重ねた人ほど皮下組織が硬くなっていることが分かった。そこで、実際の組織を観察したところ、粘弾性の高い肌では、皮下組織の脂肪細胞を取り囲む線維構造(メッシュワーク構造)が細かく色々な方向に走っていたのに対し、粘弾性の低い肌では、太さや方向性が不均一になり構造が乱れていた。したがって、加齢により皮下組織のメッシュワーク構造が変質することで、肌の粘弾性が失われていくのだと考えられた。
次に、メッシュワーク構造が加齢で変質する原因を調べた。ヒントになったのは、「肝硬変」の研究。肝硬変でも、組織が硬くなる原因は線維構造の変化にあり、これに酸素濃度が関係していることが示唆されていた。さらには、血液中の酸素量は年齢とともに徐々に減っていくことも分かっていた。そこで、培養細胞を用いて酸素濃度の影響を調べると、酸素濃度が低いとメッシュワーク構造が乱れてしまうことが判明。つまり、酸素量の低下が粘弾性の低下を引き起こすことが示唆されたのである。
さらに、実際に酸素量が肌の粘弾性に影響するのかを検証するため、肌内部の酸素量を非侵襲的に測定できる装置を開発し、60名の頬で検証。その結果、「肌の酸素量が多い人ほど柔らかく弾力のある肌を持つ」ことも明らかになった。以上のことから、肌の柔らかさや弾力を手に入れる鍵は、肌の酸素量といえるという。