「三次元」をテーマに資生堂とコーセーが高評価を獲得

第25回の中間大会で資生堂アドバンストリサーチセンターの髙垣知輝研究員が発表したのは「ホリスティックビューティ-毛細血管の三次元的可視化とその老化における皮膚物性への関与」である。

同社は、これまで加齢や紫外線によって皮膚中の毛細血管がダメージを受け、減少することを報告してきたが、毛細血管の皮膚物性への関与は未解明だった。

そこで皮膚中の構造を三次元に観察する技術開発を通じ、皮膚中の毛細血管を健康に保つことが皮膚弾力の維持につながることを見出した。

これを活用することで、シワやたるみなど、皮膚弾力の低下によって生じる肌悩みを防ぐことができると期待できる。資生堂は、この知見を基に新たなスキンケア製品への応用を目指している。

最優秀賞を受賞した資生堂の髙垣知輝研究員

一方、ポスター部門でトップ10に入ったコーセーのテーマは「ヒトの皮膚老化を再現した新たな皮膚モデルの開発」。自然老化の再現が可能な新たな三次元皮膚モデルの開発で、コーセーとフランス国立リヨン市民病院(HosipicesCivilsdeLyon)のオディールダムール(OdileDAMOUR)博士および日本薬科大学加治和彦客員教授との共同研究の成果である。発表者はコーセー皮膚・薬剤研究室フランス分室寺村崇氏である。

これまでの皮膚における自然老化のメカニズム研究においては、同一人物の皮膚老化を長期間にわたり検証することは難しく、異なる人物の間で比較することが主流だった。しかし、遺伝子背景が異なる二者間の比較では、皮膚の変化が自然老化によるものなのか遺伝子の差によるものなのかが明確にならないという問題があった。

また同一の遺伝子で評価する場合には、これまでは皮膚から細胞を単離し、培養する手法がとられてきたが、細胞培養では平面上での解析しかできず、実際の生体環境である立体的な解析ができないという問題があった。

そこで加治教授の有する同一供与者由来の異なる年齢で得られた線維芽細胞に着目。その中で若齢細胞(36歳)と老齢細胞(72歳)を用い、ダムール博士の開発した再構築三次元皮膚モデルの真皮層に導入することで、遺伝子背景が同一で年齢の異なる三次元皮膚モデル、すなわち自然老化を再現させた皮膚モデルの開発に成功した。解析の結果、真皮構造が加齢に伴い菲薄化していることを見出した(図1)。

得られた皮膚モデルをマイクロアレイ解析による網羅的遺伝子発現解析や各種タンパク質発現解析を実施したところ、真皮弾性線維の主要構成タンパク質であるフィブリリン-1及びその架橋構造の構築をになうリシルオキシダーゼが老化皮膚モデルでは有為に増加することを見出した(図2)。これらの発現上昇は加齢に伴う皮膚の菲薄化や柔軟性の欠如に関与している可能性が考えられる。