ポーラのPOLAイノベーションセンターは、2025年7月4~5日に有楽町朝日ホールで開催される第50回日本香粧品学会学術大会の口頭発表部門において、ゆずの残さから抽出したエキスの研究成果を、東京工科大学応用生物学部応用生物学科の松井毅教授と共同で発表する。

論文タイトルは「未利用資源ユズさのうエキスはケラチノサイト細胞内Ca2+濃度上昇を促す」。

発表するゆずの残さから抽出したエキスのヒトケラチノサイトへの効果は二つ。

① 細胞内カルシウムイオン(Ca2+)濃度上昇効果

② TRPV4チャネルを介したCa2+流入効果

ヒト初代培養ケラチノサイトにCa2+プローブ(Rhod-4,AM)を取り込ませて、ゆずの残さから抽出したエキスと、TRPV4阻害剤(HC-067047)またはTRPV4活性化剤(GSK1016790A)を添加して、高速タイムラプスイメージングを撮影して、 Ca2+イメージング解析を行った。

ゆずの残さから抽出したエキスは、高知県産のゆずの残さを50%エタノール水溶液で抽出して調製した。

① 細胞内カルシウムイオン(Ca2+)濃度上昇効果

ゆずの残さから抽出したエキスを添加すると、大部分の細胞において細胞内Ca2+上昇(マゼンタ矢印)が観察された(図1)。ゆずの残さから抽出したエキスは、ヒトケラチノサイトに対して、細胞内Ca2+濃度上昇を引き起こすことから、Ca2+チャネルなどの活性化を促すことが示唆された。

② TRPV4チャネルを介したCa2+流入効果

TRPV4阻害剤を添加したヒトケラチノサイトに、細胞内Ca2+濃度上昇を引き起こす、ゆずの残さから抽出したエキスを添加しても、細胞内Ca2+上昇は抑制された(補足資料1)。また、TRPV4活性化剤をヒトケラチノサイトに添加すると、細胞内Ca2+上昇が観察された(補足資料2)。このことから、細胞内Ca2+はTRPV4が活性化されることで、TRPV4を通過して細胞内にCa2+が流入し、Ca2+濃度が上昇する可能性が示唆された。

ヒトケラチノサイト(表皮細胞)において、TRPV4の活性がタイトジャンクションのバリア機能の制御に重要であり、TRPV4が活性化状態の時、皮膚バリア機能を担う表皮タイトジャンクションの形成を促進する働きを持つことがわかっている。

このことから、ゆずの残さから抽出したエキスは、TRPV4を活性化し、タイトジャンクションの形成を促進することで、バリア機能を高めることが示唆される(図2)。

【補足資料1】

ゆずの残さから抽出したエキスは、ヒトケラチノサイトに対して、細胞内Ca2+濃度上昇を引き起こし、Ca2+チャネルなどの活性化を促すことが示唆されたことから、イオンチャネルを特定するため、TRPV4阻害剤を用いた実験を行った。TRPV4阻害剤を添加したヒトケラチノサイトに、細胞内Ca2+濃度上昇を引き起こす、ゆずの残さから抽出したエキスを添加しても、細胞内Ca2+上昇は抑制された。

【補足資料2】

TRPV4が活性化することで、細胞内Ca2+が上昇することを確認するため、TRPV4活性化剤を用いた実験を行った。ヒトケラチノサイトにTRPV4活性化剤を添加すると、細胞内Ca2+上昇が引き起こされた。