最後の四つ目は、ポーラ化成工業製品設計開発部の中谷明弘氏、七原加奈氏と甲南大学理工学部の村上良氏が発表した「スポンジのような化粧膜となる二次付着しないファンデーションの開発」である。

メーク経験者は、顔に塗ったファンデーションが服やスマートフォンなどに色移りして困ったことがあるはず。この「二次付着」で、世界中の実に9割以上の女性が不快な思いをしているという(2018年~2019年、イタリア、中国、日本で計200人を対象に調査)。

二次付着は塗布後すぐに、もしくは服を脱ぎ着するときに発生していることから、ファンデーションが「乾いていないうちに擦れること」が原因であることが考えられる。そこで、最も二次付着しやすいリキッドファンデーションを例に解決策を探ることにしたという。

これまでにも、揮発成分を増やして乾きを早めたり、フィルム状の被膜を作る成分を入れたりする対策方法があったが、これらの方法では、二次付着を抑制する機能が十分でなく、肌の乾燥や使用感の悪化を引き起こしてしまうというデメリットもあった。

二次付着解決のヒントとなったのは、どんなに水分を含んでもすぐに表面がサラッと乾く珪藻土バスマット。その秘密は、スポンジのような細かい穴のあいた構造にある。珪藻土の中で、水分は深部に保持され表面にとどまらない。

そこで、表面がスポンジ状の構造になるファンデーションの開発に取り組んだ。その結果、従来のように界面活性剤を用いて水と油を乳化するのではなく、粉体で油を取り囲み水中に分散させる技術(粉体乳化)を用いることで、目指すファンデーションを実現。これを肌に塗ると、揮発しやすい油や水がファンデーション表面から蒸発した後、油を包んでいた粉体が元の配置のまま残るため、粉体でできたスポンジのような構造が露出する。

新ファンデーションは、塗布してわずか1分で布を当て擦ってもファンデーションの色はほとんど移らない。界面活性剤を用いた従来のファンデーションと比べ二次付着量は1/10になり、強く擦っても二次付着はほとんど起きなかった。使い心地も良く、特に保湿感は従来品を上回る結果となったという。