コーセーは新たな粉体表面処理技術も披露

その他の日本の研究者も多くの研究成果を発表し、注目を集めた。

コーセーメイク製品研究室の竹下卓志氏は、年齢印象に大きな影響を及ぼすほうれい線を、長時間カバーすることが可能な新たな粉体表面処理技術を採用したファンデーション開発について発表をした。

顔の中でも、特にほうれい線は老けて見える印象を強く与える要素の一つである。これまでほうれい線をカバーする方法としては、ファンデーションなどにソフトフォーカス効果のある粉体を配合することなどが提案されてきたが、時間が経つと表情の変化に伴う顔の動きにより化粧崩れが生じ、逆にほうれい線が目立ってしまうという問題があった。

そこでコーセーは、動きを吸収する自社独自開発の弾力性高分子を粉体の表面に被覆することで顔の動きに対して安定に粉体のカバー効果を発揮できるのではないかと考えた。この表面処理された粉体が顔の動きに柔軟に追従し、かつ均一な塗布膜を形成できるよう複数の高分子を検討し、最適なものを見出した。

効果検証のため、この新規粉体表面処理技術を用いた粉体を配合したファンデーション(開発品)を作製し、従来品との比較を実施。その結果、塗布直後ではほうれい線がカバーできていた従来品でも、塗布8時間後においては、ほうれい線が塗布前よりも目立ち、その周囲にも化粧崩れが見られた。SEM-EDSマッピング(元素ごとの微視的分布を可視化する観察手法)を用いたレプリカ解析でもほうれい線部位に粉体凝集と、周辺部位での化粧膜の崩壊が確認された。

一方、開発品においては塗布直後から8時間後に到るまでほうれい線がカバーされており、レプリカ解析においてもきれいな化粧膜が維持できていることが示された(図1)。

次に、開発したファンデーションを使用することにより、見た目による年齢印象がどのように変化するかを検証。ほうれい線に悩みを持つ女性を被験者とし、従来品と開発品をそれぞれ塗布してもらい、塗布直後と6時間後の顔から、専門評価者の目視により年齢印象評価を行った。

その結果、従来品、開発品いずれも素顔の年齢よりも3〜4歳若く見える印象を与えることが分った。しかし従来品においては、この印象は6時間後には失われ、素顔の年齢よりも5歳老けた印象を与えることが分かった。一方、開発品においては、塗布6時間後も年齢印象に差は見られなかった。つまり、塗布6時間後には開発品は従来品に比べ9歳も若く見せることができるという可能性が示唆された(図2)。

コーセーは今後、この技術を活用して魅力的な年齢印象を与える化粧品の開発や、他の用途でも使える様々な粉体開発に応用研究を進めていくという。