2023年はメイクアップ市場の回復にも期待


― メイクアップの今後の動向はどう考えていますか。

直川 コロナ禍の約3年間、厳しい環境でも、継続愛用して下さるお客さまと絆ができている専門店さまへのご支持は強く、その軸となっているのは「肌に触れる活動」です。昨秋以降、多くの専門店さまや百貨店では「肌に触れる活動」を再開しており、お客さまはそれを待ち望んでおられたとパーソナルビューティーパートナーが話していました。そのようなお客さまの意識がスキンケアの売り上げ伸長に結びついていると考えています。今後はメイクアップも回復に転じていくと考えています。

今、多くの専門店さまが「パーソナルカラー診断」を取り組まれています。これは、人が生まれながらにして持つ肌・髪・瞳の色に調和する色を選ぶ診断で、本来ならば長時間を要するものですが、お客さまの「私に似合う色が知りたい」という声に応えるため、店頭で短時間でも診断できるよう当社独自のノウハウを開発しました。これにより、商品提案に対する納得度が高まり、スムーズな購入に繋がっています。「パーソナルカラー診断」をきっかけにお客さまとの絆を深め、成功事例を生み出している専門店さまもいらっしゃいます。コロナ禍で対面のコミュニケーションが減る中、パーソナルカラー診断を通じて様々な対話をし、お客さまを知ることができる。そして、リアルで話すこと、聞くことの大切さを実感し、今後多くの専門店さまで定着していく取り組みになるだろうと考えています。

昨年2月開催の「ビューティーパートナーコンベンション2022」の中で23年はメイクアップに注力することを宣言しました。今年は新型コロナウイルスの収束に合わせてメイクアップの市場は回復していくと予測していますので、その機を捉えて専門店さまがお客さまにご紹介したくなる、そしてお客さまが商品を見ただけで笑顔になり、誰もが「使いたい」と思う魅力的な商品を発売しますので、どうぞご期待ください。

― 直川さんはこれまでお客との接点拡大のため、デジタルに対する取り組みの重要性を訴えてきました。

直川 デジタルは専門店さまとお客さまとの関係性を深めるサポートツールの一つでしかなく、あくまでも中心は対面でのリアルのコミュニケーションです。ただしお客さまのニーズや状況に合わせ、リアルとデジタルの両方に対応できる方が、お客さまとの幅広いコミュニケーションを取れると考えています。

それぞれの専門店さまのお客さまが望まれるコミュニケーション方法に合わせて、リアルとデジタルを使い分けすることが大切です。例えばアフターフォローのお手紙は手書きの方が気持ちが伝わる時もあれば、メールやLINEでも一律ではなく画像を貼り付けるなど、お客さまお一人おひとりに合わせた発信をすることも可能です。受け手となるお客さまに想いを馳せたコミュニケーション方法を取り入れていただけると良いと思います。

専門店さまがお客さまお一人おひとりに寄り添った活動を行っていただけるよう、私たちはサポートをさせていただきます。

― 昨年9月にスタートしたBeauty Keyの状況はいかがですか。

直川 Beauty Keyは、ワタシプラスをはじめ、各ブランドのメンバーシッププログラムや花椿CLUBなど、これまでの会員制度を一つに集約させたメンバーシップサービスとなります。お客さまが自店以外で購入された商品や肌診断の分析データも共有されるようになります。Beauty Keyを登録されているお客さまは、ほとんどの方が日頃商品を購入しているお店をフォローされています。専門店さまはお客さまが来店されている時以外の情報もキャッチアップすることで対話が増え、より深くお客さまについて知っていただくことができます。

もともと専門店さまには顧客台帳が存在し、お客さまが購入された商品から対話した内容まで細かく記録をされてきました。台帳の存在によって、「点」ではなく連続した「線」での応対が可能となり、専門店さまは多くのお客さまからの支持を獲得してきました。その台帳の情報にBeauty Keyの情報が加わることでカウンセリングの引き出しが増え、よりパーソナルで満足度の高い提案が実現するよう私たちもサポートさせていただきたいと考えています。

今後は専門店さまの応対の幅を広げ、お客さまの満足度を向上させるために、この仕組みを専門店さまやお客さまの声を反映し進化をさせてまいります。

― 昨年「ビューティーコンサルタント」から「パーソナルビューティーパートナー(PBP)」への呼称変更と、今後のあり方について発表しました。コロナ禍を経て生活者の行動・意識が変化している今、その役割も変化しているということでしょうか。

直川 新呼称「パーソナルビューティーパートナー」は、全国のBC(旧称)からの公募により選出し、“お客さまお一人おひとりに寄り添い「自分らしい美」を一緒に創り上げるパートナー”になるという意味が込められています。パーソナルビューティーパートナーは、お客さまが持つ様々な情報と“美容のプロフェッショナル”としてのスキルや知識を活かし、これまで以上にお客さまに寄り添い、お客さまお一人おひとりにとって特別で記憶に残る体験を提供する応対を通じ、お客さまとの長期にわたる絆を深めていきます。PBPは役割が変化したのではなく、「原点回帰」と捉えています。その「原点」とは、お客さまのニーズや気持ちをしっかり捉え、その方に合った商品やお手入れ方法の提案、そして応対をしていくことにあると思います。リアル、デジタルのどちらであっても目の前にいらっしゃるお客さまのニーズ、気持ちがわかるPBPになってほしい。多くのお客さまの支持を集める専門店さまには、必ず素晴らしい奥さまやスタッフさまがいらっしゃいます。その方々に共通するのは、お客さまがお店に入ってきた時の表情、声のトーンなどで瞬時にお客さまの気持ちを察し、最適な応対をされていることです。今後はPBPへの教育も強化してまいります。

昨年は実習の件数が19年並みに回復し、お客さまとのコミュニケーションが増えてきています。お客さまお一人おひとりに寄り添うためにはまずお客さまを知ることが必要。その基本の「キ」を磨き、人としての魅力を高めるトレーニングを行っていきたいと思います。

― 今後さらに店頭での活動がポイントになるということですね。

直川 店頭でお客さまとの接点を増やすと共に、いかに充実させていくかが大切です。店頭でお客さまをお迎えするのは、奥さまやスタッフさま、そしてPBPです。演劇に例えると、店頭は「舞台」のようなものです。「舞台」である店頭でお客さまを中心に、奥さま、スタッフさま、PBPが集中して活動できるような環境を整えるのが、営業担当にとっての今年最大のミッションです。

営業担当は専門店さまと「お客さま」について話す機会を増やし、すべてを「お客さま起点」に考えることが大切です。市場がコロナ以前の状態に戻るタイミングでお客さま起点に振り向けられているかということが今年の鍵になると考えています。