――ジャパン・ビューティーメソッド協会(JBMA)を立ち上げましたが、目的はなんでしょうか。

大竹 美容従事者の技術力・美容知識の向上を目的に実施する「メイクアップ検定」、そして検定のための講習を行っています。正しい美容理論に基づいたメイクアップの技術・理論を段階的に身につけるために四つのコースを用意。モデルへの似合わせ方、美しさの引き出し方など、感覚で語られがちな知識を具現化し、理論を理解でき、メイクアップの実践力を高めることができます。

――なぜメイクアップに特化した検定をつくったのですか。

大竹 私は2009年から、資生堂美容技術専門学校の校長をしています。学生たちに話を聞くと、ヘアだけでなく、メイクアップの技術を学びたいという学生が年々増えているのです。メイクアップの授業はしているのですが、それだけでは技術力のアップに結びつきません。そこで学内でメイクアップ検定を始めました。すると、メイクアップに興味ある学生は、入門編である3級から始めて、最難関の1級を取得する。年々、合格率も高くなっています。つまり、検定合格という課題があれば、興味がある学生のレベルは上がっていくことを実感したわけです。それならば、学内だけでなく、幅広い美容従事者を対象にした検定を立ち上げれば、メイクアップの技術向上、ひいては日本の美容業界の発展になるだろうと考えたんです。

――メイクアップというと、百貨店や化粧品専門店でカウンセリング販売する美容部員を思い浮かべます。

大竹 確かに現状はそうです。各ブランドの美容部員、小売店のスタッフは、化粧品を購入してもらうための無料サービスとして、メイクアップを提供しています。だから給与にメイクの技術料は入っていません。私は資生堂に入社して、広告やファッションショーの仕事をしてきました。ここでは、ヘアもメイクもモデルさんに施してきました。やりがいのある仕事ばかりでしたが、メイクアップアーティストのように技術で稼げる仕事に就ける美容従事者は少数です。例えば、ヘアサロンでメイクを希望するお客さんというと、結婚式やパーティなど、晴れの日のみ。この現状を変えれば、美容業界は活性化するのではないでしょうか。

――検定で資格をとると、仕事が増え、自立できるのでしょうか。

大竹 一般向けのメイクアップの仕事を増やすためにも検定が必要なのです。検定に合格したということは、高い技術力を持っているということです。メイクについては、最近はテレビでも、雑誌でも常時特集が組まれ、皆さん知識だけは豊富になってきています。しかし、いざ自分でメイクしてみると、どうもうまくいかない、という経験を多くの女性がお持ちではないでしょうか。そんなときにヘアサロンや化粧品専門店で、JBMAの検定資格を持っている美容従事者が、メイクをしてあげる。それも、その人にあったメイクをしますから、皆さん喜ばれるはずです。

JBMAは感性を磨くメイクアップ、その人にあったメイクアップを第一にしています。メイクは、あらゆる年代の女性がやるようになっています。それは若く見られたいからではなく、自分らしさを出したい。つまり、メイクは自己表現の最たるもの。周りから素直に評価され、素敵ですねと言われたら、明るく、楽しく人生を過ごせるようになるのではないでしょうか。JBMAは今までにはなかった画期的な試みだと、私自身は内心思っているのです。

――JBMAは店頭活動のあり方を変えていく、と。

大竹 その通りです。そのための検定制度なのです。JBMAの資格を持っている人にメイクをしてもらったら、こんなにきれいになれるんだと、金額以上の価値を感じてもらえれば、対価の支払いに納得感が生まれるでしょう。

――大竹さんは資生堂で育ったアーティスト。JBMAで使用するアイテムは、資生堂のブランドに限定するのでしょか。

大竹 いいえ、他のメーカーの化粧品でも構いません。あくまでも、JBMAの目的は、美容従事者の技術向上を通じて、美容業界の社会的地位を高めること。メイクアップアーティストという職種を確立させることができれば、自ずとさまざまなブランドの売れ行きがアップすると考えます。JBMAは発足したばかりですから、現在の講師陣は、資生堂が運営するプロのヘア&メイクアップアーティストを育成するスクール「SABFA」の卒業生を中心としたメンバー構成になっていますが、近い将来、状況は変わります。ベーシックコース、プロフェッショナルコース、エキスパートコースとランクアップしていき、その上に認定講師養成コースがあるので、うまくいけば20年中には、さまざまな出自の認定講師が誕生すると思います。

――今後の目標を教えてください。

大竹 18年はベーシックコースおよびプロフェッショナルコースの合格者が出ました。その方々に感想を聞くと、畑違いの人が集まり、メーキャップの技術力、知識量などを知り、いい刺激になったという声をいただきました。他にはないユニークな協会だと、手応えを感じています。

18年はエキスパートコース、19年は認定講師養成コースの合格者を出して、この検定の実績を高めていく。そのためにも、化粧品メーカー、小売店、美容学校などに声を掛けています。将来的には、メーキャップのプロフェッショナルなら誰でも知っていて、信頼を寄せてもらえる協会にしていくために努力を積み重ねます。