2030年3月期に売上高4150億円を目指す

ロート製薬が「ロートグループ 中長期成長戦略 2025~2035」と「長期視点での成長を実現するための経営方針」を発表した。10 年後の2035年を見据え、持続的に成長していくための中期定量目標として30年3月期までの財務目標を設定。売上高4150億円、営業利益率13%、EBITDA18.2%を目指す。25年3月期と比べ、売上高は34.5%増、営業利益は38.8%増という野心的な目標である。

ロート製薬は、存在意義(パーパス)を「世界の人々に商品やサービスを通じて『健康』をお届けすることによって、当社を取り巻くすべての人や社会を『Well-being』に導き、明日の世界を元気にすること」と定めている。祖業の一般用医薬品を核に医薬部外品、化粧品、健康食品、食品などのセルフケア領域、医療用医薬品や医療機器、細胞治療薬の開発、それに付随するCDMO事業などのプロフェッショナル領域までをウェルビーイングな社会実現に貢献する事業スコープと位置づけている。「サイエンスベースの企業体質(未知のものを解き明かそうという情熱)」を強化し、長期的かつ持続的にお客、患者が満たされないニーズの解決を最優先に取り組むことで、パーパスの実現を目指していく。

同社は、長期的かつ持続的な成長のために、長期視点で事業を組み立てることを重視している。事業セグメントによって異なる事業サイクル(基礎的な研究を含めた研究開発プロセスから、そこから生み出された製品を実際にお客もしくは患者が使用するまでの期間)に対して、適切かつ健全なポートフォリオを形成することが重要だからだ。具体的には、化粧品2~3年、一般用医薬品3~5年、医療用医薬品10~15年、食品2~10年、細胞治療10~20年、CDMO3~5年程度を目途とし、市場環境等状況の変化を勘案しながら事業性の判断をしていく。

中長期の課題と戦略を明確に設定

中長期戦略では、課題は三つあり、それぞれの戦略を明確に設定している。一つ目は「事業収益力の強化」で、セルフケア事業のグローバル展開・新分野への拡大に挑む。具体的には、アイケア・スキンケアの新価値を国内外へ展開、ヘアケア・フェムケアなどの新分野で地位確立である。

二つ目の課題は技術商品力の深化と拡充。フィトサイエンスの素材研究からサプリメント導入や内服・食品での胃腸ケア・予後ケア、EYSとのシナジーなど、ウェルビーイングなライフスタイルの提供を強化する。フィトサイエンスとは、地域の自然素材や技術を生かした健康産業の発展と社会課題の解決を目指す同社の新事業戦略の一つ。自然界に存在する素材の活性や機能(フィトパワー)に着目し、最先端のサイエンスで解き明かすことで、フィトパワーの価値や可能性を拡げ、持続可能な社会づくりに貢献する考え方だ。

三つ目の課題は、メディカル事業の基盤構築である。医療事業ファンデーション・ネットワークの確立、ケミカルからバイオ・細胞加工までのCDMO拡大、眼科事業のグループ内連携、皮膚科向け化粧品、医療用眼科新薬・再生医療等医薬品の開発を進める。

研究開発費は売上比最大5%程度を継続

成長投資の方針は、持続的な成長と企業価値向上に向けて、研究開発投資(知財権確保含む)、設備投資、人財投資、DX投資を積極的に行うとともに、事業シナジーを生み出すM&Aや出資を積極的に行うことで長期に渡る競争力を強化する。研究開発費は連結ベースで売上比最大で5%程度を継続的に投下し、既存コア領域と新規領域のサイエンス力を強化し、設備投資はグローバルの需要拡大とサプライチェーンの充実を意識して行う。会社と個人の共成長を実現するための人財投資、個人の力を最大限発揮するためのDX投資を行うことで、一人当たりの生産性の向上を目指す。

またグローバルへの投資については、香港、中国、ベトナム、インドネシアなどは 25年以上の事業実績の結果、業界内ポジション上位、高度成長、高営業利益率を享受する収穫期を迎えており、この収益を今後成長が期待される海外マーケットに投資することで、さらなるサステナブルな価値向上を目指す。具体的には中・東欧、南米、南アジア、中東が5~7年スパン、アフリカは7~10年スパンでの投資を行う。