質の良い美容情報を熱心に投稿し、高い情報感度と圧倒的な知識を持つSNSアカウント、通称「美容垢」。必ずしも顔出ししない人も多いが、詳細かつ丁寧なレビューにより、フォロワー数10万人を超える支持や影響力を持つアカウントも存在する。今回は美容垢の人気の背景を紐解き、企業が力を借りるべき美容垢の選び方も紹介する。

SNSによって、美容垢の特徴や発信内容は異なる。Twitter上の美容垢は、おおよそ2種類だ。

「コスメのスウォッチや感想を載せ続けるタイプ」と「美容全般(サロン/ダイエット/ファッション/エステなど)にまたがって、ライフスタイルを発信するタイプ」がいる。

Twitterにおける美容垢への関心は上昇傾向だ。トレンダーズの調査によれば、「美容垢」に関するツイートは2016~19年の間で約30倍増えたことがわかった(※1)。

2020年のリツイートを含まない純粋な投稿数で、スキンケアは前年比28%増の380万件、コスメは同16%増の960万件だったとツイッター社は発表している(※2)。Twitter内での美容情報に対する関心の高まりが伺えるだろう。

一方、InstagramはTwitterと違って拡散力が弱いため、消費者が検索しなければ美容垢や美容情報に出会いにくい特性がある。そのため、ハッシュタグ検索で上位にくるよう、写真のクオリティや画像内のテキスト表現に凝り、ユーザーへの有益なコンテンツを届ける美容垢も目立つ。リールなど動画での発信も多いのが特徴だ。

Twitterの美容垢は「個人」のイメージが強いが、Instagramは「美容メディア」アカウントが多いことにも注目したい。検索しないと出会えず、「画像中心」のInstagram上では、雑誌のような世界観を持った媒体の方が刺さりやすいのかもしれない。

美容垢の人気の理由の一つに、「インフルエンサーよりもフォロワーとの距離が近く、親近感を持たれやすい」ことが挙げられるだろう。「一般ユーザーに近い視点の正直で詳細なレビュー」「圧倒的な情報量・知識量」が、潜在顧客の比較検討の材料や、購入の後押しになっていると考えられる。それに加え、Twitterの場合は、「本音を言う場所」という特性と、美容垢の「本音レビュー」がマッチしていることもポイントだ。

しかし最も重要な背景は、ユーザーの購買行動が変化していることである。SNSが浸透した現在、UGC(クチコミ)を起点とした購買行動が頻繁に起きている。UGCにいいね!をし、SNSからGoogleへ移動し検索、購買、買ったモノを投稿。それが新たなUGCとして別のユーザーの目に入る、というプロセスだ。ホットリンクでは一連の購買行動を「ULSSAS」と呼んでいる。

MimiTVが行った調査でも、クチコミによる商品購入への強い効果が明らかになった。「Twitterで美容関連の情報を見る女性の約7割(68.5%)」が、「T​​witterのクチコミやレビュー、企業からの情報などを参考に、化粧品や美容商品を購入したことがある」と回答している。UGCが少ないことにより、買わなかった経験のある女性は61.7%だ(※3)。

一般消費者にとって、美容垢は「頼りになる情報源」であることは明らかだ。顧客接点確保のためにも、美容垢の存在は無視すべきでない。

では、薬機法に抵触しない施策を展開することは大前提として、企業は力を借りるべき美容垢をどのように選べばいいのか。

まずは、自社商品やブランドとマッチする人物の起用を念頭に「美容垢をどう活用したいか」を明確にする必要がある。売りたい商品の特徴・届けたいターゲット・訴求フォーマット(動画or画像)によって、アカウントはもちろん、使うSNSも変わるためだ。

美容垢をフォロワー数だけで判断することにも注意したい。見るべきポイントは、以下の3点だ。

①ユーザーとコミュニケーションを取っている

②購買につながりやすいユーザーがフォロワーにいる

③フォロワーがアクティブにツイートしている

情報は拡散されなければ購買につながらないため、アカウント主とフォロワーの関係性や投稿回数は見過ごせない。アカウント主の年代と、商品のターゲット層の年代がマッチしているかどうかも重要だ。また、美容垢の普段の投稿頻度や内容、文章もチェックするといい。普段から商品のどこに着目し、どんな方法で投稿しているかを把握すれば、適切なディレクションが出来る。

過去に自社ブランドの商品を投稿していれば、なお望ましい。自社商品を好んでくれている美容垢を起用すれば、投稿も自然な雰囲気になるからだ。

世界観を大事にしたいブランドは、アカウント主の言葉遣いとブランドイメージにギャップが生じないよう、より普段の投稿内容のチェックが必要になる。

SNSの一般ユーザーにとっては「美容垢を追いかければ、定番もトレンドも質の高い情報も分かる時代」となった。企業から公式情報を提供し、発信を強化していくことももちろん大事だ。だがそれだけではなく、クチコミの影響力が増すSNS時代においては、「プロの消費者」ともいうべき美容垢のUGCを増やし、発信力を借りることも重要だと覚えておいてほしい。

最後に、筆者が個人的によく参考にしている美容垢を紹介する。

Twitter、Instagram合わせてフォロワーは15万人以上。アイシャドウやリップの投稿が非常にわかりやすい。美容垢発のオンラインサロンを主催しており、筆者としては美容垢の可能性を感じる。

Twitterのフォロワー数は11万人。独自の世界観があり、商品のラメが際立つ写真の取り方も絶妙。センスを感じるアカウントだ。

韓国アイドルのメイクとコスメを紹介する美容垢。韓国コスメの最新情報を自然とキャッチアップでき、実践に役立つメイク方法も学べる。

 

株式会社ホットリンク

グローバルでのソーシャル・ビッグデータの流通と分析ソリューションの提供により、ソーシャル・ビッグデータを価値化する企業である。市場や自社・競合、顧客の声やキャンペーン反響などの各種調査、ターゲットユーザーのプロファイリング、ブームの兆し発見などマーケティングROI(投資収益率)向上や製品改善、経営革新や予測など、ビジネスにおけるソーシャル・ビッグデータの幅広い活用を支援している。さらにデータを基にプロモーションも提供することで、クライアントのSNSマーケティング全般をサポートする。
[ホームページ]
https://www.hottolink.co.jp
[サービスに関する問い合わせ先]
https://www.hottolink.co.jp/service/contact/

 

※1 https://markezine.jp/article/detail/30661

※2 BrandWatchによる調査。日本のツイートのみ対象。
2021年3月取得。対象期間:①2020/01/01〜2020/12/31、
②2019/01/01–2019/12/31
参考(https://kokusaishogyo-online.jp/2021/07/62441)

※3 https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000013.000055921.html