鎌田 畠山さんが理事長を務める「森は海の恋人」も啓蒙活動を大切にしていますね。

畠山重篤(以下、畠山) 「サンゴ礁の通訳者」とは、金城さんは、なかなか良い言葉をおっしゃいますが、その気持ちはよくわかります。私は、牡蠣の養殖をしている漁民です。牡蠣の餌である植物性プランクトンは、海と川が混じり合う汽水域で、たくさん発生します。その川をさかのぼっていくと、森がある。豊かな森がないと、牡蠣の生育が悪くなることから、30年以上前に「森は海の恋人」というスローガンを掲げて、落葉広葉樹を植える取り組みを続けています。

それと同時に、川の流域で生活する人々に森と海の関係性、自然保護の重要性を伝えなければいけないと考え、子どもたちを海に呼んで、体験学習を続けてきました。このように植樹と教育を続けた結果、気仙沼の川と海の環境は良くなったんです。

東北の森林保全活動を行うNPO法人「森は海の恋人」の理事長・畠山重篤さん

鎌田 子どもへの啓発活動は、「SAVE the BLUE」でも大事にしています。コーセーは18年、「国際サンゴ礁年2018」のオフィシャルサポーターとして、毎日新聞社と連携し、沖縄の美しい海とサンゴ礁を守ろうとする人々を描く「SAVE the BLUE物語」の感想文・感想画コンテストを行いました。環境省と毎日新聞社、コーセーが入賞作品を選び、最優秀賞に選ばれた二人の小学生を沖縄に招待し、サンゴの株分けを体験していただきました。いまでも小学生の作文に書かれていた言葉が忘れられません。

例えば、「自分もサンゴを守りたいと強く感じました。そのためにまず、ふだんから自然のありがたみを感じ、自分でもできる小さなことから自然との関わり方を見直していこうと思いました」、「座間味島で見た海の素晴らしさを友達に伝えよう。お店で見た『雪肌精』のびんのすき通る青さが、沖縄のサンゴを守る活動につながっていることを知らせよう」などです。これまで以上にわかりやすく、「SAVE the BLUE」の価値を発信していかなければいけないと決意を新たにしました。

サンゴ移植を体験する畠山さん

畠山 大人の思考を変えるのは簡単ではありませんから、子どもたちの教育の中から積み上げて行くことが結局、環境を良くする近道なんだと思います。私が18年に出版した児童書『人の心に木を植える』は、人間の心に豊かな森が増えないと、最終的には海は豊かにならないと考え、執筆したんですよ。

鎌田 子どもに寄り添う母親と化粧品ブランドは、親和性が高い。つまり、女性に身近な存在である化粧品は、環境意識の醸成に貢献できる存在と言えます。「雪肌精」は、コーセーという化粧品メーカーの先頭に立って環境問題に向き合っています。「SAVE the BLUE」のメッセージである「あなたが美しくなると、地球も美しくなる。」に惹かれ、「雪肌精」の商品を手に取った女性は多い。商品の品質に満足していただき、継続して使用していただければ、より環境保全活動が進むのは間違いありません。この流れを強くするためにも、毎日のスキンケアがサンゴと森林の育成につながっていることをお客さまに伝え続けることが大事だと思っています。

畠山さんと一緒に、サンゴ移植を体験する鎌田さん

畠山 植樹活動は、自然からすると、点の活動に過ぎず、環境全体を変えることは難しい。だからこそ、教育に力を入れることが大事なんです。国が行っている全国植樹祭も、国民の意識を動かすことが最大の目的でしょう。人の心が変われば、行動も変わりますから。「森は海の恋人」の取り組みは、小中高の教科書に取り上げられ、大学の入試では小論文のテーマに使われています。地道に活動を続けたことで、「森は海の恋人」の意義や目的が伝播していますから、「SAVE the BLUE」も同じように続ければ、大丈夫だと思いますよ。

鎌田 確かに、これまで「SAVE the BLUE」も同じように広がってきました。販売促進施策ではありませんから「SAVE the BLUE」の取り組みに共感してくれる人を一人、また一人と増やしてきました。口コミが広がるように、少しずつ興味を持つ人が増え、キャンペーンに参加する人が増えたんです。

例えば、全国の取引先さまで「雪肌精」を販売しているビューティコンサルタントが「海の種」に足を運び、金城さんの講話を聞いた後、サンゴの株分けを体験しています。これを通じて「SAVE the BLUE」の価値を理解したビューティコンサルタントが全国の店頭で、お客さまはもちろん、取引先さまの方々に「雪肌精」と「SAVE the BLUE」について熱心に伝えています。

その結果、取引先の方々も沖縄の「さんご畑」を訪問するなど、「SAVE the BLUE」の支援者が増えていった。毎年のキャンペーン期間中、全国のお店が沖縄の海とサンゴをモチーフにした装飾に切り替わるようになったのは、その成果です。

環境問題の解決にそれぞれの立場で動く3人の議論は、出会った瞬間から活発に行われた

金城 僕は、サンゴの専門家だから、畑違いの人たちに環境問題を身近に感じてもらう仕掛けはつくれなかった。それを「SAVE the BLUE」は解決してくれたわけです。