資生堂の2024年12月期決算は、売上高が前年比1.8%増の9905億8600万円、コア営業利益が8.7%減の363億5900万円、営業利益が73.1%減の75億7500万円と増収減益、税引き前利益は12億6500万円、親会社の所有者に帰属する当期利益は108億1300万円のそれぞれ欠損となった。売り上げは、日本事業、欧州事業が成長性・収益性の高い注力領域への積極投資や戦略的マーケティングが功を奏し、力強い成長が継続した。アジアパシフィック事業は緩やかな成長となった。
日本事業は、売上高が9.2%増の2838億円、コア営業利益は売上増による差益増や費用効率化などにより281億円と、前年に対し267億円改善した。成長性・収益性の高いブランド・商品・顧客接点へ活動を集中させることで成長の加速に取り組み、愛用者数の増加が続いている「SHISEIDO」「クレ・ド・ポー ボーテ」「エリクシール」を中心とした注力ブランドで力強い成長を実現した。また、戦略的マーケティングによりファンデ美容液という新市場創出に取り組み、「SHISEIDOエッセンススキングロウファンデーション」などが好調に推移したほか、「クレ・ド・ポー ボーテ」や「エリクシール」の新商品の好調も成長をけん引した。訪日外国人旅行者数はコロナ禍前の水準を上回り過去最高を更新したが、旅行者の消費行動の変化を背景にインバウンドの。
成長基調に転じた欧州事業は、売上高は13.4%増の1327億円、コア営業利益は売上増に伴う差益増などにより37億円、前年に対し3億円の増益となった。「SHISEIDO」や「NARS」が伸長したほか、フレグランスでは「narciso rodriguez」や新商品が貢献した「ISSEY MIYAKE」が好調をけん引した。
アジアパシフィック事業の売上高は6.5%増の717億円、コア営業利益は、売上増に伴う差益増などにより60億円と、前年に対し9億円の増益だった。国・地域で見ると、台湾で市場鈍化の影響を受けたが、タイを中心とする東南アジアがけん引し成長を維持した。「アネッサ」「クレ・ド・ポー ボーテ」、フレグランスで力強い成長となった。
中国事業は、売上高0.8%増の2500億円、コア営業利益は、売上減に伴う差益減を、原価低減、固定費低減などの構造改革効果などにより相殺し123億円、前年に対し53億円の増益となった。と市場環境変化のなかで成長と収益性のバランスを取りながら、より消費者のニーズを踏まえたブランド・商品の価値伝達による持続的成長への転換を進めている。景況感の悪化に伴う消費低下の影響を受ける中でも、中国最大のEコマースイベントである「ダブルイレブン」では、ALPS処理水の海洋放出後の日本製品買い控えの影響があった前年からの反動もあり、大幅伸長した。通期では、「クレ・ド・ポー ボーテ」、「アネッサ」、「NARS」は成長したが、「SHISEIDO」は苦戦が続いた。
米州事業の、売上高は7.5%増の1185億円、コア営業利益は、売上減に伴う差益減などにより2億円、前年に対し110億円の減益となった。「NARS」や「Tory Burch」が増収となった一方で、上期に一時的な生産減・出荷減が生じ、第3四半期において生産は安定化したものの、「Drunk Elephant」は売上回復が遅れた。
トラベルリテール事業(空港・市中免税店などでの化粧品・フレグランスの販売)は、売上高18.6%減の1078億円、コア営業利益は、売上減に伴う差益減などにより50億円、前年に対し121億円の減益となった。訪日外国人旅行者数の増加により、日本において堅調な回復を実現した一方、中国海南島・韓国では、中国人旅行者を中心とした消費の大幅な減少の影響を受け、低い出荷レベルが続いた。
25年12月期通期業績は、売上高が前年比0.4%増の9950億円、コア営業利益は0.4%増の365億円、営業利益は78.2%増の135億円と増収増益、税引き前利益145億円、親会社の所有者に帰属する当期純利益は60億円とそれぞれ黒字化する見通し。