資生堂の2023年12月期第3四半期連結累計期間の売上高は前年比5.3%減の7224億1700万円、コア営業利益は1.6%増の368億2500万円、営業利益は27.6%減の258億2600万円、親会社の所有者に帰属する四半期利益は29.4%減の205億1700万円だった。

実質ベースの売上高は、規制強化、旅行者を中心としたビジネスモデルへの回帰・市場正常化の流れを受けた流通在庫調整が継続したトラベルリテール事業では、前年を下回った。また、中国事業においては、堅調だった上期に対し、当第3四半期連結会計期間は景況感の悪化やALPS処理水の海洋放出後の日本製品買い控えの影響を受け、前年比マイナスに転じた。一方、日本事業は、市場の回復やインバウンド需要の増加を捉えた戦略的な新商品の発売・マーケティング活動の強化等によって着実な伸長を果たしたほか、米州事業、欧州事業、アジアパシフィック事業においても、力強い成長を実現した。

地域別にみると日本事業では、マスク着用の緩和に伴う需要回復や、新型コロナウイルス感染症の感染症法上の位置づけが5類へ移行したことなどを受けた外出機会の増加に合わせ、多くのブランドで革新的な新商品を展開。「クレ・ド・ポーボーテ」や「SHISEIDO」では愛用者数の着実な増加と共に力強い成長を実現したほか、「エリクシール」はリニューアル商品を中心に好調を維持、また外出機会の増加を受けたサンケア市場の成長を捉えた「アネッサ」も力強い成長を実現した。また、訪日外国人旅行客等の増加を受けてインバウンド消費も徐々に回復した。

結果、日本事業の売上高は前年比7.3%増の1916億3400万円、為替影響および事業譲渡影響を除く実質ベースでは7.8%増となった。コア営業損失は2億300万円、売上増による差益増や費用効率化などにより、前年に対し57億円改善し、当第3四半期連結会計期間においては黒字に転換した。

中国事業では、大型プロモーションを中心とした成長から、より消費者のニーズを捉えたブランド・商品の価値伝達による持続的成長への転換を進めている。上期においては、「SHISEIDO」や「クレ・ド・ポー ボーテ」が全体をけん引し堅調な成長を実現した一方で、当第3四半期連結会計期間には景況感の悪化やALPS処理水の海洋放出後の日本製品買い控えの影響を受け前年比マイナスに転じた。特にEコマース売り上げが大きく影響を受けた。

以上のことから、中国事業の売上高は3.6%増の1780億5300円、現地通貨ベースでは前年比1.2%増、為替影響および事業譲渡影響を除く実質ベースでは前年比3.9%増となった。コア営業利益は19億7300万円、上期における売上増による差益増と、市場環境変化を受けて減収となった当第3四半期連結会計期間におけるマーケティング活動の一部見直しや機動的なコストコントロールにより、前年に対し106億円改善した。

アジアパシフィック事業の国・地域では、台湾が成長に転じたほか、韓国や東南アジアでは力強い成長が継続しました。「NARS」や「SHISEIDO」が好調を維持し、全体の成長をけん引した。結果、売上高は0.1%増の488億700万円、現地通貨ベースでは前年比5.1%減、為替影響および事業譲渡影響を除く実質ベースでは前年比14.2%増となった。コア営業利益は16億6800万円、売上増に伴う差益増の一方、マーケティング投資、人件費の増加等により、前年に対し24億円の減益となった。

米州事業では、戦略的マーケティング活動を通じて、市場の継続的な拡大を確実に捉えた。SNSマーケティングが奏功した「Drunk Elephant」が引き続き大きく伸長したほか、「NARS」や「SHISEIDO」も着実に成長した。結果、売上高は前年比16.6%減の816億8400万円、現地通貨ベースでは前年比22.3%減、為替影響および事業譲渡影響を除く実質ベースでは前年比17.9%増となった。コア営業利益は64億7800万円、売上増に伴う差益増の一方、人件費の増加、事業譲渡影響等により、前年に対し3億円の減益となった。

欧州事業では、デジタルマーケティングの強化や積極的な新商品展開により「NARS」が全体を引き続きけん引したほか、新商品「All of Me」が貢献した「narciso rodriguez」も力強い成長を遂げた。また、店舗拡大を進めた「Drunk Elephant」や「クレ・ド・ポー ボーテ」等が着実に伸長。結果、売上高は8.0%減の825億2400万円、現地通貨ベースでは前年比16.4%減、為替影響および事業譲渡影響を除く実質ベースでは前年比16.0%増となった。コア営業利益は43億9800万円、事業譲渡影響等により、前年に対し42億円の減益となった。

トラベルリテール事業(空港・市中免税店などでの化粧品・フレグランスの販売)では、新型コロナウイルス感染症による影響の緩和に伴う旅行客数の増加により、日本では力強い回復を実現した。一方、韓国・中国海南島では、規制強化、旅行者を中心としたビジネスモデルへの回帰・市場正常化の流れを受けた流通在庫調整の影響を大きく受け、前年を下回った。以上のことから、売上高は9.7%減の1085億3000万円(現地通貨ベースでは前年比15.9%減)、為替影響および事業譲渡影響を除く実質ベースでは前年比11.3%減となった。コア営業利益は189億5900万円、売上減に伴う差益減により、前年に対し79億円の減益となった。

23年通期見通しは、中国・トラベルリテールの市場環境の変化を踏まえ売上高、利益とも下方修正した。売上高は前回見通しの1兆円を9800億円(前年同期比8.2%減)に、コア営業利益は600億円を350億円(同31.8%減)、親会社の所有者に帰属する当期利益は280億円を180億円(同47.4%減)に修正した。