資生堂の2023年12月期業績は、売上高は前年同期比0.2%増の4941億8900万円、コア営業利益59.9%増の280億3900万円、親会社の所有者に帰属する四半期利益27.7%減の117億5300万円となった。売り上げは、旅行者を中心としたビジネスモデルへの回帰・市場正常化の流れを受けた流通在庫調整が継続したトラベルリテール事業では前年を下回った一方、市場の回復を捉えた戦略的な新商品の発売・マーケティング活動の強化等によって日本事業と中国事業は着実な伸長を果たした。米州事業、欧州事業、アジアパシフィック事業においても、力強い成長を実現した。コア営業利益は、戦略的なマーケティング投資を通じた実質増収および機動的なコストマネジメントの継続等により、大幅な増益となった。親会社の所有者に帰属する四半期利益は、コア営業利益が増加した一方、非経常項目においてパーソナルケア製品の生産事業譲渡の契約締結に伴う減損損失、構造改革費用および事業譲渡損を計上したことなどで減益となった。

セグメント別にみると、日本事業では、マスク着用の緩和に伴う需要回復や、新型コロナウイルス感染症の感染症法上の位置づけが5類へ移行したことなどを受けた外出機会の増加に合わせ、多くのブランドで革新的な新商品を展開。「クレ・ド・ポー ボーテ」や「SHISEIDO」では愛用者数の着実な増加と共に力強い成長を実現したほか、最新の技術を搭載した「エリクシール」のリニューアル商品は引き続き好調に推移している。メイクアップ需要の回復も着実に捉え、「マキアージュ」も力強い成長を実現。これらにより売上高は8.2%増の1251億5700万円となった。コア営業利益は34億1900万円の欠損だったが、売上増による差益増や費用効率化などにより、前年に対し約40億円改善した。

中国事業では、大型プロモーションを中心とした成長から、より消費者のニーズを踏まえたブランド・商品の価値伝達による持続的成長への転換を推進。「SHISEIDO」では、実店舗ならではのブランド体験を提供する取り組みの強化によりオフライン売り上げが全体をけん引。「クレ・ド・ポー ボーテ」は、Eコマース売り上げがけん引し、両ブランドとも力強い成長を実現した。「618」Eコマースプロモーションは、プラットフォーム多様化への対応強化と共に、高機能商品への注力・効果効能訴求の拡大を進め、市場を上回る売上成長を実現。これらにより売上高は12.8%増の1306億900万円となった。コア営業利益は売上増による差益増により、前年に対し約75億円改善し、54億9800万円と黒字転換した。

アジアパシフィック事業の国・地域では、台湾が第2四半期より成長に転じたほか、韓国や東南アジアでは力強い成長が継続。「NARS」が昨年からの好調さを維持し、全体の成長をけん引。売上高は2.2%減の306億8000万円となりました。為替影響および事業譲渡影響を除く実質ベースでは13.9%増だ。コア営業利益は売上増に伴う差益増の一方、マーケティング投資の増加等もあり、90.2%減の2億3600万円。

米州事業では、戦略的マーケティング活動を通じて、市場の継続的な拡大を確実に捉えた。SNSマーケティングが奏功した「Drunk Elephant」が前年比2倍超の成長を実現したほか、「NARS」「SHISEIDO」も着実に成長し、売上高は実質ベースで23.3%増の528億2800万円。コア営業利益は売上増に伴う差益増により10.0%増の40億5900万円となった。

欧州事業では、デジタルマーケティングの強化や積極的な新商品展開により「NARS」が全体を引き続きけん引したほか、先進ヒアルロン酸研究技術を搭載した美容液「SHISEIDO ビオパフォーマンス スキンフィラー」が好調な「SHISEIDO」も着実に成長。また、店舗拡大を進めた「Drunk Elephant」「クレ・ド・ポー ボーテ」等が着実に伸長した。売上高は実質ベースで16.7%増の525億7500万円。コア営業利益は事業譲渡影響等により51.6%減の13億円だった。

トラベルリテール事業では、新型コロナウイルス感染症による影響の緩和に伴う旅行客数の増加により、日本では力強い回復を実現した一方、韓国・中国海南島では、旅行者を中心としたビジネスモデルへの回帰・市場正常化の流れを受けた流通在庫調整の影響を大きく受け、売上高は0.5%減の774億7300万円と前年を下回った。コア営業利益は売上減に伴う差益減により9.1%減の154億4700万円と減益だった。

23年12月期通期業績は、売上高6.3%減の1兆円、コア営業利益16.9%増の600億円、親会社の所有者に帰属する当期利益18.1%減の280億円と前回公表数値を据え置いた。