資生堂の2022年12月期第3四半期は、売上高が前年比4.7%増の7627億4300万円。利益面では、コア営業利益は、中国での売り上げ減に伴う差益減やパーソナルケア事業譲渡の影響等はあったものの、構造改革を通じた固定費の低減や機動的なコストマネジメントの推進により、前年比21.9%増の362億3500万円。営業利益は同62.7%減の356億6000万円。親会社の所有者に帰属する四半期利益は、前年にパーソナルケア事業譲渡に伴う譲渡益を計上していた一方、当期はパーソナルケア製品の生産事業譲渡に伴う減損損失を計上したことなどから、同34.8%減の290億4600万円となった。

事業別売上高をみると、日本事業では、創業150周年を記念したプロモーションのほか、スキンビューティーブランドへの戦略的投資を継続的に強化。9月には「エリクシール」から最新のコラーゲン技術を搭載した化粧水・乳液をリニューアル発売し、得意先と協働で、ブランド・商品の価値伝達強化。新規購入者増加が奏功し、中価格帯スキンケア市場をけん引。18年の前回リニューアルを上回る好調な売れ行きを見せた。百貨店は好転傾向にあるものの、Eコマースを除くチャネルは19年水準には依然戻っていない。以上のことから、売上高は前年比9.9%減、事業譲渡影響を除く実質ベースでは同1.3%増の1786億5700万円となった。コア営業損失は、経費効率化を進めたものの、パーソナルケア事業譲渡に伴う減益等により、前年に対し134億円悪化の59億円となった。

中国事業は、主要プラットフォームへの展開拡大、効果・効能にフォーカスしたコミュニケーション強化等を通じ、Eコマースの売り上げは成長を継続。また、実店舗ならではのユニークな体験価値の提供、愛用者基盤の拡大の継続的な取り組みにより、上期には前年比マイナスだったオフラインの購買は、第3四半期には前年並みまで回復した。一方で、ロックダウン等による引き続き厳しい環境や先行きの不透明感を受け、市場では流通在庫の調整が発生した。これらにより、売上高は前年比9.9%減、現地通貨ベースでは同22.1%減、実質増減率では同10.7%減の1719億円となった。コア営業損失は、売り上げ減による差益減等により前年に対し34億円悪化の87億円となった。

アジアパシフィック事業では、台湾など、一部の国・地域で回復に遅れが見られましたが、韓国や東南アジアを中心に力強い成長を実現。また、主要Eコマースプラットフォームへの展開強化、デジタル活用による顧客接点の拡大を継続することで、アジア全体のEコマースはシェアを拡大した。以上のことから、売上高は前年比3.4%増、現地通貨ベースでは同6.4%減、実質増減率は同10.2%の487億円となった。コア営業利益は、売上増に伴う差益増の一方、人件費、経費等の増加により、同0.9%と微減の41億円となった。

米州事業では、新型コロナウイルス感染症による影響の緩和と経済活動の正常化に伴い、化粧品市場は全カテゴリーで成長を継続。その中でも、特に「NARS」は、新商品の好調やデジタルマーケティング強化を通じたEコマースの力強い成長により、シェアを拡大した。また、北米アンバサダーを新たに起用するなど現地ニーズをとらえたプロモーションを強化した「クレ・ド・ポー ボーテ」も好調に推移した。以上のことから、売上高は前年比9.1%増、現地通貨ベースでは同7.3%減、実質増減率7.7%増の979億円となった。コア営業利益は、構造改革を通じた固定費削減などにより、前年に対し55億円増の68億円となった。

欧州事業では、新型コロナウイルス感染症による影響の緩和と経済活動の正常化に伴い、化粧品市場は全カテゴリーで成長を継続。その中で資生堂は、需要の回復を捉えたプロモーションにより、「NARS」や「narciso rodriguez」等が力強い成長を実現し、シェアを拡大。加えて、「クレ・ド・ポー ボーテ」の店舗数拡大も着実に進め、売り上げを拡大した。以上のことから、売上高は前年比12.9%増、現地通貨ベースでは同7.8%増、実質増減率10.0%増の897億円となった。コア営業利益は、売上増に伴う差益増に加え、構造改革を通じた固定費削減等により、前年に対し59億円増の86億円となった。

トラベルリテール事業では、海南島におけるロックダウンの影響を受けた一方、その他の地域では新型コロナウイルス感染症による影響の緩和に伴い旅行客の往来が再開し、欧米を中心として急速に回復。また「クレ・ド・ポー ボーテ」や「イプサ」を中心としたスキンビューティーブランドの店舗数拡大も着実に進んだ。結果、売上高は前年比35.5%増、現地通貨ベースでは同6.5%増、実質増減率15.2%増の1201億円となった。コア営業利益は、売上増に伴う差益増などにより、前年に対し113億円増の268億円。

プロフェッショナル事業は、ヘアサロン向けのヘアケア、スタイリング剤、ヘアカラー剤やパーマ剤などの技術商材を日本、中国、アジアパシフィックで展開していたが、7月に一部を除き同事業を譲渡した。結果、売上高は前年比23.8%減、現地通貨ベースでは同28.8%減の84億円となった。コア営業利益は、前年に対し2億円増の13億円となった。

2022年12月期の売上高は前期比5.9%増の1兆700億円、コア営業利益は同6.0%減の400億円、税引前利益は同58.4%減の412億円、親会社の所有者に帰属する純利益は同45.6%減の255億円となる見通し。いずれも従来予想を据え置いた。