資生堂の2021年12月期業績は、売上高が前年比12.4%増の1兆351億6500万円、事業譲渡などの影響を除く実質ベースでは11.9%増となった。

営業利益は、売上増に伴う差益増、プロダクトミックスの改善に加え、市場の変化に合わせた適切なコストマネジメントを実施したことなどにより、177.9%増の415億8600万円、経常利益は365.2%増の448億3500万円、親会社株主に帰属する当期純利益は「DOLCE&GABBANA」に係る商標権の減損損失およびプレステージメイクアップ3ブランドの譲渡に伴うのれんの減損損失を計上した一方で、営業増益およびパーソナルケア事業譲渡による特別利益計上などにより424億3900万円と黒字転換した。

事業エリア別の実績を見ると、日本事業は売上高8.9%減の2761億7300万円、パーソナルケア事業の譲渡影響を除く実質ベースでは1.4%減。営業利益は0.9%減の95億7900万円だった。コロナ禍で変化した生活者ニーズを捉え、スキンビューティー領域への戦略的投資を強化し、ベースメイクやサンケアなどのカテゴリーにおいてシェアを拡大。また、ライブコマースやWebカウンセリングを強化するなど、得意先と協働して店頭とオンラインの融合に取り組み、多くの顧客接点を創出した。これらにより、Eコマース売り上げは2桁成長した。前年に引き続き、お客のニーズに対応したマスクにつかない商品の迅速な開発・導入に取り組んだほか、「Second Skin」技術を搭載した画期的な新製品の発売など、お客への提供価値の最大化を追求した。一方、緊急事態宣言による小売店の時短営業や外出自粛などに伴い来店客数が減少したことに加え、訪日外国人旅行者の減少によりインバウンド需要も低調だった。

中国事業の売上高は16.5%増の2747億2100万円、営業利益は93.6%減の11億7700万円だった。営業利益が減益となったのは、注力ブランドへのマーケティング投資を強化したほか、一部、原価悪化に加え、パーソナルケア事業譲渡影響などがあったからだ。第3四半期の記録的豪雨や、主要都市を中心とした新型コロナウイルス変異株の拡大に伴い、店舗の一部閉鎖や来店客数減少などの影響を受けたが、戦略的に投資を強化しているEコマースは好調に推移。中国最大のEコマースイベントであるW11で市場を大きく上回る売上成長を達成したことなどにより、Eコマース売り上げ比率は40%台後半に達した。また、プレステージブランドへの戦略的投資を継続することで、「クレ・ド・ポー ボーテ」や「NARS」など、高価格帯領域においてシェアを拡大した。

アジアパシフィック事業の売上高は9.9%増の650億300万円、営業利益は15.1%増の37億3700万円だった。一部の国・地域で新型コロナウイルス感染拡大に伴うロックダウンの影響が続いたが、各地域の主要Eコマースプラットフォーマーへの展開を強化したほか、「SHISEIDO」や「NARS」などのプレステージブランドが飛躍的に成長したことにより、アジア全体のEコマースでシェアを拡大した。

米州事業の売上高は32.8%増の1213億6900万円、営業利益は132億700万円の欠損だったが、売上増に伴う差益増に加え、販売事業での固定費削減による収益性改善が寄与し、赤字額は縮小した。新型コロナウイルス感染拡大の影響が続いていた中で、ワクチン接種の普及に伴い、回復が遅れていたメイクアップを含め化粧品市場のモメンタムが改善。その中で、米国発のスキンケアブランド「Drunk Elephant」は店舗数を拡大したほか、「NARS」はバーチャル新店舗をオープンさせるなどデジタルマーケティングを強化しシェアを拡大した。また、プロモーションを強化した「SHISEIDO」や「クレ・ド・ポー ボーテ」に加え、フレグランスブランドも好調に推移した。

欧州事業の売上高は24.1%増の1170億4000万円、営業利益は売上増に伴う差益増に加え、販売事業での収益性改善が寄与したほか、デジタルメディア投資強化に伴う費用効率化や固定費削減などにより、24億6100万円へと黒字転換した。ワクチン接種の普及に伴い、スキンケアやフレグランスを中心に市場は回復基調となる中で、「クレ・ド・ポー ボーテ」や「Drunk Elephant」の展開拡大に加え、オンラインカウンセリングやデジタルプロモーションの強化によりEコマース売り上げも伸長するなど、需要回復を捉え、全カテゴリーでシェアを拡大した。

トラベルリテール事業(空港・市中免税店などでの化粧品・フレグランスの販売)は、売上高22.3%増の1204億6000万円、営業利益は49.9%増の219億5000万円だった。引き続き国際線の大幅減便に伴うグローバルでの旅行者減少、中国海南島においても、新型コロナウイルス変異株拡大に伴うフライトの減便などのマイナス要因はあったが、Eコマース売り上げを中心に大きく成長。また、「Drunk Elephant」の展開強化に加え、主要ブランドの海南島での店頭カウンター数の拡大などにより、アジアを中心に力強い成長を実現した。

プロフェッショナル事業は、売上高24.4%増の158億6600万円、営業利益は7億5700万円に黒字転換した。ヘアサロンへの来店客数の回復やEコマースでのプロモーション強化、新プレミアムヘアカラーブランド「ULTIST」、サステナブルな取り組みのもとに作られたサロン向け新ヘアケアブランド「HAIR KITCHEN」の貢献などにより増収となった。

22年12月期通期業績は、連結売上高は6.3%増の1兆1000億円、事業譲渡影響などを除くと実質14%増となる。利益については、売上増に伴う差益増の一方、市場の回復を見据えた戦略的投資を織り込み、営業利益は44.3%増の600億円、経常利益は41.6%増の635億円、親会社株主に帰属する当期純利益は5.7%減の400億円を見込む。