資生堂の2020年12月期決算は、売上高が前年比18.6%減の9208億8800万円、営業利益が86.9%減の149億6300万円、経常利益が91.1%減の96億3800万円と減収減益、当期純利益は116億6000万円の欠損となった。

営業利益は、売り上げ減に伴う差益減に加え、事業基盤強化に向けた構造改革に係る一時費用の発生や、中国やEコマースなど成長領域へのマーケティング投資を継続強化した一方、売り上げの変動に合わせた機動的なコストコントロールに加え、全社で経費等を中心に徹底した費用効率化を進めたことなどから、黒字で着地した。

事業別売上高をみると、最も構成比の高い日本事業が29.7%減の3030億3500万円と減収。新型コロナ禍でニーズが変化する中、マスクにつきにくいBBクリームや需要が増えているハンドクリームなどの新製品の発売や美容情報の発信強化、在庫適正化などを推進した。またデジタルを活用したマーケティングの強化を通じてオムニチャネル化などに取り組んだことで、Eコマース売り上げは二桁成長を実現。しかし、プレステージブランドやプレミアムブランドの減収、インバウンド需要の激減などのマイナスを吸収しきることができなかった。

その他海外においては、アジアパシフィック事業が15.3%減の591億7300万円、米州事業が25.7%減の914億1000万円、欧州事業が20.4%減の942億8000万円となった。

一方、唯一成長したのは新型コロナ禍からの回復が早かった中国本土を中心とする中国事業だ。「SHISEIDO」「クレ・ド・ポー ボーテ」「イプサ」「NARS」などのプレステージブランドは、実店舗での展開拡大に加え、Eコマースへの投資強化などにより大きく成長し、シェアを拡大。また、W11では前年比2倍超の売り上げを達成したことなどにより、中国事業の売上高は9.0%増の2358億400万円となった。同事業におけるEコマース売上比率は 40%を超えた。

トラベルリテール事業は19.8%減の985億100万円。今期から、日本の空港免税店等におけるビジネスも統合し、全世界のトラベルリテール事業が連携できる体制で臨んだ。しかし、新型コロナウイルスの感染拡大により、国際線の大幅減便に伴うグローバルでの旅行者減少等の影響を受けた。一方で、中国海南島への国内旅行者の数や、韓国市中免税店やEコマースでの売り上げが引き続き高水準で推移したことに加え、「イプサ」や「エリクシール」などの店頭カウンターの展開強化に取り組んだことなどにより、アジアでは前年を上回る成長となった。

ヘアサロン向けのヘアケア、スタイリング剤、ヘアカラー剤やパーマ剤などの技術商材を日本、中国、アジアパシフィックで販売するプロフェッショナル事業は13.1%減の127億5500万円となった。

2021年12月期通期業績予想は、売上高は19.4%増の1兆1000億円、営業利益が133.9%増の350億円、経常利益が221.6%増の310億円の増収増益、当期純利益は115億円の黒字転換を見込む。
新型コロナ禍の影響は続くとしながらも、下期以降は緩やかに回復することを想定。このような事業環境変化に対し、プレミアムスキンビューティー事業やデジタルを中心としたビジネスモデルへの転換など、成長戦略領域への投資を強化するとともに、事業構造改革による収益基盤の再構築を進めていく考えだ。なお、2月3日発表のパーソナルケア事業譲渡が与える影響については精査中であり、今回の業績予想には織り込んでいない。