資生堂の2024年12月期第3四半期業績は、売上高が前年同期比0.0%の7227億5400万円と横ばい、利益面はコア営業利益25.6%減の274億1500万円、営業利益91.5%減の21億8300万円、親会社の所有者に帰属する四半期利益96.3%減の7億5400万円と大幅減益となった。売り上げは、中国人旅行者を中心とした消費の減速により低い出荷レベルとなったトラベルリテール事業や、景況感の悪化に伴う消費低下の影響を受けた中国事業が前年を下回ったほか、米州事業では上期に一時的な生産減・出荷減が生じ、第3四半期において生産は安定化したものの、売り上げ回復が遅れ、減収となった。その一方で日本事業は成長性・収益性の高いブランドへの活動の集中や新市場創造に向けた戦略的マーケティングが功を奏し力強い成長を実現、欧州事業の好調維持、アジアパシフィック事業の堅調な推移がカバーし横ばいを確保した。利益は、トラベルリテール・中国・米州事業の減収が響きコア営業利益は減益。親会社の所有者に帰属する四半期利益は、コア営業利益の減益に加え、非経常項目において主に日本事業の早期退職支援プランに関する構造改革費用を計上したことが影響し、減益となった。

セグメントごとの業績を見ると、日本事業は、成長性・収益性の高いブランド・商品・お客接点へ活動を集中させることで成長の加速に取り組み、愛用者数の増加が続いている。「SHISEIDO」「クレ・ド・ポー ボーテ」「エリクシール」を中心としたコアブランドで力強い成長を実現した。また、戦略的マーケティングによりファンデ美容液という新市場創出に取り組み、「SHISEIDO エッセンス スキングロウ ファンデーション」などが好調に推移したほか、「エリクシール ザ セラム aa」などの新商品の好調も成長をけん引した。これらにより売上高は10.5%増の2112億円となった。コア営業利益は売上増による差益増や費用効率化などにより185億円と黒字化した。

中国事業は、景況感の悪化に伴う消費低下の影響を全体的に受ける中でも、「クレ・ド・ポー ボーテ」「アネッサ」「NARS」は成長した一方で、「SHISEIDO」は苦戦が続き、売上高は2.4%減の1739億円となった。コア営業利益は売上減に伴う差益減を、原価低減、固定費低減などの構造改革効果などにより一部相殺したことで32.3%増の26億円と増益だった。

アジアパシフィック事業はタイを中心に成長を維持。「アネッサ」「SHISEIDO」「クレ・ド・ポー ボーテ」が全体の成長をけん引し、売上高は9.1%増の532億円。コア営業利益は売上増に伴う差益増などにより、179.4%増の47億円の大幅な増益となった。

米州事業は、「Tory Burch」、「narciso rodriguez」が増収となった一方で、「NARS」や「Drunk Elephant」において上期に一時的な生産減・出荷減が生じ、第3四半期において生産は安定化したものの、売り上げ回復が遅れた。その結果、売上高は6.8%増の872億円となった。コア営業利益は、売上減に伴う差益減などにより、39.3%減の39億円と減益だった。

欧州事業は、ホリデーシーズンに向けた出荷に一部遅れが生じたものの、「SHISEIDO」「NARS」「Drunk Elephant」が積極的なマーケティング活動により伸長したほか、「narciso rodriguez」がフレグランスの好調をけん引したことで、売上高は10.9%増の916億円と増収。コア営業利益は、売上増に伴う差益増の一方、マーケティング投資増などの要因により、24.2%減の33億円と減益だった。

トラベルリテール事業は、訪日外国人旅行者数の増加により、日本において堅調な回復を実現した一方、中国海南島・韓国では、中国人旅行者を中心とした消費の大幅な減少の影響を受け、低い出荷レベルとなり、売上高は21.0%減の858億円と減収。コア営業利益は、売上減に伴う差益減などにより71.9%減の53億円と大幅な減益となった。

24年12月期通期業績は、売上高で100億円、コア営業利益で200億円、税引前利益で215億円、親会社の所有者に帰属する当期利益で160億円、それぞれ下方修正。売上高1.7%増の9900億円、コア営業利益12.2%減の350億円、営業利益82.2%減の50億円、税引前利益64.6%減の110億円、親会社の所有者に帰属する当期利益72.4%減の60億円を見込む。