伊藤園は「第9回 伊藤園ウェルネスフォーラム」を3月14日に都内で開催。身近に潜む健康課題「イートロス」(食べられない状態が続くこと)をテーマに掲げ、2020年から同社と共同研究を実施してきた東京大学大学院医学系研究科の専門家とともに、イートロスの健康リスクや対処法について発信した。
主催者を代表して伊藤園中央研究所の瀧原孝宣所長は「全国で100歳以上の高齢者が53年連続で過去最多を更新し9万2139人に達するなど、人生120年時代を迎えている。イートロスは食べられない状態が続くことであり、超高齢化社会ではご自身にもご家族にも起こり得る。イートロスについて医学的に研究されている先生方とその解決策を議論したい」とあいさつした。
基調講演では、東京大学大学院医学系研究科 外科学専攻 感覚・運動機能医学講座口腔顎顔面外科学分野の星和人教授、東京大学大学院医学系研究科 加齢医学講座 老年病学の小川純人准教授、東京大学大学院医学系研究科イートロス講座の米永一理特任准教授、東京大学大学院医学系研究科の渡辺林治特任講師が登壇。イートロスの対策や予防について科学的根拠を踏まえて発表した。
パネルディスカッションでは、基調講演を行った専門家4名と伊藤園中央研究所の瀧原所長、三菱総合研究所ヘルスケア事業本部の大橋毅夫主席研究員がモデレーターとして登壇。「2040年には約600万人がイートロスに陥るとの試算がある。医療の圧迫にもつながり、影響が大きい問題だ」(星教授)、「フレイル(年齢とともに筋力や心身の活力が低下した状態)を未然に防ぐためにも食事が大事」(小川准教授)、「イートロスの解決には医療と産業界の連携が重要だ。われわれが共同開発した『とろみ緑茶』は能登地震の現場でも介護が必要な高齢者の方々に貢献できた」(米永特任准教授)、「歯科に行けないことがストレスにつながることがわかった。健康のためには歯科受診も重要だ」(渡辺特任講師)などと意見を交わした。
最後に瀧原所長が「『とろみ緑茶』が能登地震の現場で活用されたことは学びを得た。今後も世のためになる商品を開発するとともに、食べられないことが危険な状態であることを伝え、イートロスについての情報を発信していく」と語り、イベントを締めくくった。
月刊『国際商業』2024年05月号掲載