オムロンヘルスケアとエムスリーは、家庭で記録した心電図データを活用した医療相談サービスを3月から開始した。心房細動の早期発見と早期治療を促進するための取り組みで、脳・心血管疾患の発症ゼロの実現を目指す。
3月5日にオムロンヘルスケア東京事業所で発表会を開催。オムロンヘルスケアの加藤宏行執行役員国内事業統轄本部長は「2022年から長期戦略ビジョン『Going for ZERO-予防医療で世界を健康に-』を掲げている。循環器事業においては、家庭用血圧計の発売が昨年50周年を迎えるとともに、世界110か国で累計3億5000万台の販売を達成した。今回われわれは脳・心血管疾患発症ゼロに向けて、新たなチャレンジに取り組む。家庭で心電図を記録できる心電計をグローバルで展開し、高血圧以外のリスク因子を早期に発見するとともに、エムスリー様と共同開発する新たなサービスの構想をご紹介したい」と述べた。
エムスリーコンシューマプロダクトグループの山口敬頼グループリーダーは、国内の医師の約9割が会員である同社の運営サイト「m3.com」について紹介したあと、一般向けサービス「アスクドクターズ」について「日常的な健康不安に対し、医師がウェブで回答を行っている。質問投稿数は年間30万件を超えており、心電図や心電計に関する相談も年間4000件以上にのぼる。オムロンヘルスケア様と協業することで、より多くの方の不安を解消し、早期発見・早期受診に取り組みたい」と話した。
オムロンヘルスケア循環器疾患事業統轄部心電・医療事業部の野崎大輔部長は、デジタルを活用した心房細動の早期発見サービスの構想を説明。同社が提供する心電計付き上腕式血圧計や携帯型心電計、血圧や心電などのバイタルデータを簡単に記録・管理できるスマートフォンアプリ「オムロンコネクト」ついて紹介したあと、「新サービスは家庭で記録した心電図データを解析して、心房細動の可能性が検出された場合にアプリ上で受診を促す。心電図などを医師と共有しながら相談ができる。また、心房細動の早期発見に特化した医療機関検索システムを構築していく」と述べた。
発表会では、杏林大学医学部循環器内科学の副島京子教授が心房細動の早期発見の重要性について講演。心房細動は加齢とともに有病率が高くなり、心房細動の患者は脳卒中の発症リスクが約5倍に高まること、症状は多種多様であるものの無症状が半数にのぼることを指摘。「早期発見のためには、自宅での自己検脈、血圧計測、心電図記録が非常に有用だ。医療におけるデジタルツールの活用は今後さらに重要になる」と話した。
月刊『国際商業』2024年05月号掲載