資生堂は5月12日、2020年12月期第1四半期の連結決算を発表した。売上高は、現地通貨ベースで前年同期比15.8%減、円換算後では、同17.1%減の2268億9300万円となった。米国会計基準ASC第606号適用影響および米国スキンケアブランド「Drunk Elephant」買収などの影響を除く、実質ベースでは同16.4%減となる。営業利益は、同83.3%減の64億9600万円。純利益は、同95.8%減の14億200万円。

日本事業の売上高は、同21.2%減の856億7300万円。前期の「フェルゼア」「エンクロン」のブランド譲渡などの影響等を除く、実質ベースでは同21.0%減となる。新型コロナウイルス感染症拡大により、外出自粛に伴う消費マインドの低下、小売店の営業時間短縮や臨時休業等の影響を受け、プレステージブランドやコスメティクスブランドを中心に減収。さらに、訪日外国人旅行者の大幅な減少に伴い、インバウンド需要も急激に減速した。営業利益は、売上減に伴う差益減やプロダクトミックスの悪化などにより、同64.4%減の80億7000万円だった。

中国事業の売上高は、現地通貨ベースで同12.0%減、円換算後では同15.2%減の445億1400万円。新型コロナウイルス感染症拡大により、1月後半から大きな影響を受け、一時は約7割の小売店が閉鎖していたが、3月後半には9割以上が営業再開するなど、中国本土では回復の兆しが見られた。また、投資を強化しているEコマースは、プレステージブランドを中心に成長した。営業利益は、売上減に伴う差益減、プロダクトミックスの悪化に加え、計画に対しては抑制しているもののマーケティング投資の増加などにより、同59.3%減の52億8200万円となった。

アジアパシフィック事業は、不透明な経済環境の中で、ブランドの展開拡大やEコマースの強化に取り組んだが、東南アジア地域を中心に新型コロナウイルス感染症拡大の影響を受けた。一方、台湾は影響が比較的小さく、3月には回復の兆しが見られた。これらの結果、売上高は現地通貨ベースで同19.2%減、円換算後では同20.3%減の150億8300万円。営業利益は、売上減に伴う差益減などにより、同55.0%減の10億6400万円となった。

米州事業は、3月以降は新型コロナウイルス感染症拡大による都市封鎖や外出制限等の影響を受けた。一方、厳しい市場環境の中でもEコマースが引き続き伸長している「Drunk Elephant」は堅調に推移。これらにより、売上高は現地通貨ベースで同14.6%減、円換算後では同15.9%減の232億9200万円となった。米国会計基準ASC第606号適用影響および「Drunk Elephant」買収影響等を除く実質ベースでは、同21.7%減となる。利益面では、売上減に伴う差益減に加え、買収に伴うのれん償却費等の費用増などにより、前年と比べ43 億6800万円悪化し、 営業損失は88 億7700万円となった。

欧州事業の売上高は、現地通貨ベースで同14.9%減、円換算後では同18.3%減の204億3900万円。1月は「Dolce&Gabbana」の新製品効果等もあり、市場を上回る成長を続けたが、3 月以降は新型コロナウイルス感染症拡大による都市封鎖や外出制限等の影響を受け、イギリス、スペイン、イタリアなどで大きく減速した。利益面では、売上減に伴う差益減に加え、新製品発売に伴うマーケティング投資の増加などにより、前年より46億3900万円悪化の64億6300万円の営業損失となった。

トラベルリテール事業(空港免税店等での化粧品・フレグランスの販売)は、アジアを中心とした国際線の減便に伴うグローバルでの中国人旅行者の大幅減少等の影響を受け、特に日本やアジア地域では、2月以降お客の購買が大きく減少。多くのブランドが減収となった一方、前年同期は一部商品の品切れ等により出荷水準が低調だった「クレ・ド・ポー ボーテ」や「NARS」などが伸長した。その結果、売上高は現地通貨ベースで同1.6%減、円換算後では同3.1%減の277億9500万円となった。営業利益は、売上減に伴う差益減やプロダクトミックスの悪化などにより、同33.7%減の49億7400万円となった。

プロフェッショナル事業は、ヘアサロン向けのヘアケア、スタイリング剤、ヘアカラー剤やパーマ剤などの技術商材を日本、中国、アジアパシフィックで販売。今期は、新型コロナウイルス感染症拡大に伴う外出自粛やヘアサロンの休業等の影響を受け、売上高は現地通貨ベースで同17.2%減、円換算後では同18.7%減の28億7700万円となった。営業利益は、売上減に伴う差益減があった一方、マーケティング投資の減少などにより、同6.3%増の 6000万円となった。

20年12月期の連結業績予想と配当に関しては、国内外での新型コロナウイルス感染症拡大により、消費者の需要減退や購買行動の変容、企業の経済活動の停滞が起きており、今後も感染症拡大の状況や各国規制による経済活動の再開タイミングなど不確定要素が多く、現時点ではその動向および影響額について見極めることが困難なため、いったん取り下げるとした。