I-neは、成分の浸透性を制御する2種のリポソーム(脂質二重膜からなる小胞体で、内部に成分を封入することができる。化粧品や医薬品の有効成分の運搬体として広く利用されており、皮膚への浸透性向上や徐放性の制御に有効)を含んだ独自処方を新たに開発し、有用成分の放出速度と肌深部への浸透を制御する処方を確立した。

同技術は、有用成分を効率的に肌深部へ届けつつ、一定の時間放出し続けることができ、特に夜間・睡眠時に使用するスキンケア製品において、より高い効果実感を与えられると考えられる。

スキンケア製品の効果を最大化するには、有用成分を表皮や真皮といった肌の奥の細胞まで届けることが重要だ。しかし、角層バリアが成分の浸透を妨げるため、全ての成分が目的の領域に到達するわけではない。

また、肌の細胞が成分を吸収、消化、排せつする過程は、成分ごとに時間軸が異なる。有効期間が短い成分もあるため、一度に成分を大量投与しても効果が持続しない場合もある。特に睡眠中は、化粧品の追加塗布ができず、乾燥や摩擦を受けやすい状態となるため、成分を少しずつ放出し、長時間効果を持続させることも重要である。

これらの課題に対応するには、成分の浸透性を高めつつ、徐放性(有用成分がゆっくりと時間をかけて放出される仕組みのこと)も考慮した新たな技術が求められる。

そこで同社は日本で初めて(エクスプレステージ処方設計実績において)、性質の異なる2種のリポソーム技術を活用した処方を開発した。本デリバリーシステムにより、時間差で成分を届け続けることが期待される。

評価方法は二つ。

1.浸透効果の確認:各リポソーム及び蛍光色素を含んだ試料を調製後、三次元培養皮膚を用い浸透性を確認した。

2.徐放性の確認:蛍光色素を含んだ各リポソーム試料を調製後、放出された蛍光色素量を経時的に評価した。

図1

評価の結果、2種類のリポソームを組み合わせることで、有用成分を表皮まで速やかに届けるだけでなく、真皮までゆっくり深く届けることも両立できることが示唆された。同技術は、スキンケアの効果を高めるための技術革新の一助となると考えられる。

図2

速攻型リポソームの浸透性:表皮まで成分が多く浸透する(図3、図4)。

図3:表皮モデルの蛍光強度(リポソームなし時の観察画像)

図4:表皮モデルの蛍光強度(リポソームあり時の観察画像)

持続型リポソームの浸透性:真皮まで成分が多く浸透する(図5、図6)。

図5:真皮モデルの蛍光強度(定量値)

図6:真皮モデルの蛍光強度(観察画像)

持続型リポソームの徐放性:速攻型リポソームに比べ、成分を徐々に放出する(図7)。

図7

I-neは今後も夜間の美容習慣の質と効率を高めるための新知見・技術の探究を行い、理念である「Chain of Hapiness」の実現に向けまい進していくとしている。