ポーラ・オルビスグループの研究・開発・生産を担うポーラ化成工業は、シワ部位特有の乾燥感に着目した研究を進め、

①シワ部位では、保湿因子フィラグリンを増やす酵素「SASPase」の発現が減少していること

②表皮細胞でSASPaseの発現が減少していると、好中球を誘引する「IL-8」の発現が増加すること

③ヒメフウロとクチナシの混合エキスが、表皮細胞でSASPaseの発現を増加させ、IL-8の発現を減少させること

の3点を発見した。

同研究により、シワ部位では「うるおいを保持しづらい角層構造」と「真皮のシワを生み出す環境」が同時に形成されており、“シワ特有の乾燥状態”となっている可能性が示された。

ポーラ化成工業はシワ改善のパイオニアとして長年研究を続けている。そんな中、「シワ部位は保湿ケアをしても乾燥感が残る」という生活者の実感に着目し、シワ部位に特有の乾燥メカニズムがあるのではないかと考えた。そこで、シワ部位における表皮細胞の遺伝子を網羅的に解析したところ、シワがない部位と比べて、SASPaseと呼ばれる酵素の発現が減少していることを見いだした。

SASPaseは、表皮の顆粒層(角層のすぐ下にある層)に存在する酵素だ。角層の中で働く数珠つなぎ状のプロフィラグリンというタンパク質を分解して、単体のフィラグリンに変え、正しく機能できる形にするはたらきを持っている。フィラグリンは角層を構成する重要なタンパク質の一種だ。単体のフィラグリン(単量体)は、角層細胞の中にあるケラチン線維(細いタンパク質の繊維)を束ねることで、角層細胞の構造を整え、水分を保持しやすくする役割を担う。

一方で、SASPaseが減少し、プロフィラグリンが適切に分解されないと、2、3個につながったフィラグリン(2量体・3量体)となり、単体のフィラグリンが不足してしまう。すると、ケラチン線維がうまく束ねられなくなり、角層細胞の構造が乱れ、水分を保持しにくい構造の角層になる。水分を補っても抱え込みにくく、乾燥による小ジワが生じやすい状態になる(図3)。つまり、シワ部位ではSASPaseの減少により、「水分を補ってもうるおいにくい角層環境」となり、乾燥による小ジワが生じやすくなると考えられる(図1-A)。

シワの原因には、大きく2タイプある。表皮の乾燥によるものと、真皮構造の分解や劣化によるものだ。そこで、SASPaseが真皮のシワ形成の方にも影響しているか検証した。SASPaseの発現部位である表皮において、好中球に関連する遺伝子との関係を調べた。研究の結果、表皮細胞ではSASPaseの発現が減少すると、正常な細胞と比べて、IL-8が増えることを突き止めた(図2、図4)。このことから、SASPaseの発現量はIL-8を介した好中球の浸潤(組織内への移動)と関係し、皮膚のより深い層である真皮におけるシワ形成にも関与していることが示唆された。

IL-8には、真皮の好中球を呼び寄せる働きがあり、好中球はエラスターゼなどのタンパク質分解酵素を放出する。好中球エラスターゼがコラーゲンや弾性線維の分解を引き起こし、シワの原因となる。したがって、SASPaseが減少した状態では、シワが真皮まで刻まれやすくなると考えられる(図1₋B)。

以上より、SASPaseの減少は、乾燥による小ジワを引き起こすだけでなく、IL-8増加の影響を介して真皮のシワ予防にもつながる可能性が示された。

表皮細胞においてSASPaseの発現を増やす素材を探索したところ、ヒメフウロとクチナシの混合エキスにSASPaseの発現量を約2倍に増やす作用と、IL-8の発現を約30%減少させる作用があることを発見した(図5)。つまり同混合エキスは肌のうるおいを保持して小じわに働きかけ、好中球を呼び寄せないことで真皮のシワ予防にも働きかける可能性が示唆された。

同研究からポーラ化成工業は、シワ部位特有の乾燥感を解明し、「シワにはシワのための保湿がある」という新たなスキンケア概念を提案する。