コーセーは、北海道大学大学院薬学研究院山田勇磨教授との共同研究により、真皮のミトコンドリアに化粧品成分を届けるカプセルを開発した。ミトコンドリアは細胞におけるエネルギー生産工場であり、加齢とともにその機能が低下し、肌の老化を進める一因となる。有用な成分をミトコンドリアまで届けることはエネルギー生産機能の維持・向上に寄与する可能性があり、同技術はこれまでにないエイジングケアにつながることが期待できる。
加齢に伴い生じるシワやたるみは、多くの人が抱える肌悩みの一つだ。その大きな要因に、肌の真皮線維芽細胞内にあるミトコンドリアのエネルギー産生機能の低下が挙げられる。ミトコンドリアの働きが衰えると、肌のハリを維持するコラーゲンなどの産生が滞り、結果としてシワやたるみを引き起こす。こうした課題に対し、有用成分をミトコンドリア近傍へ的確に届けるための効率的なアプローチが長年求められてきた。そこで同研究では、エイジングケアの新たな可能性を切り開くべく、ミトコンドリアを標的としたカプセル化技術の開発に挑戦した。
成分をミトコンドリア近傍まで送り届ける技術として、北海道大学大学院薬学研究院の山田勇磨教授らのグループが開発したナノカプセル「MITO-Porter™」(マイトポーター)に着目した。このカプセルはミトコンドリア膜を突破するのに優れた性質があることが確認されている。この技術を応用し、コーセーのカプセル技術の一つとして「化粧品用ミトコンドリア送達カプセル」を開発した。開発においては、カプセルの構成成分の組み合わせ、カプセルの大きさの制御、製造条件の最適化まで多岐にわたる検討を実施した。肌表面から真皮への浸透性、真皮線維芽細胞への取り込み、ミトコンドリアへの移行性を指標に検討を重ねることで、ミトコンドリアに最も効率的に届くカプセルを実現した。
カプセルの真皮への浸透性を確認するため、ヒト皮膚を用いた浸透挙動の解析を行った。蛍光色素を内包した開発品を肌表面に塗布し、蛍光色素の真皮への浸透量を計測したところ、同技術を使用していない類似のカプセル(比較品)よりも多くの蛍光色素が真皮にて検出された(図2)。この結果は、同技術がカプセルに内包した成分を、肌の奥深くにある真皮まで送り届けるポテンシャルを有することを示唆している。
次に、真皮線維芽細胞へのカプセルの取り込み性と、その中のミトコンドリアへの移行性を評価した。蛍光色素を内包した開発品を細胞に添加した結果、比較品と比べて、より多くのカプセルが線維芽細胞内へ取り込まれることが確認された(図3)。
さらに、共焦点レーザー顕微鏡による詳細な観察を行ったところ、カプセルに含ませた蛍光色素がミトコンドリアの近傍に集積している様子が確認された(図1)。これらの結果から、今回開発したカプセルには内包した成分を、肌表面に塗布した際に真皮浸透させる機能、真皮線維芽細胞への取り込みを促進させる機能、ミトコンドリア近傍への到達を高める機能があることが示唆された。
ミトコンドリアという細胞のエネルギー源に直接働きかける同技術は、次世代のエイジングケアを支える基盤となることが期待される。今後コーセーは、カプセルに内包すべき成分の検討を進め、ミトコンドリアに対する多角的な機能向上を検証することで、既存の枠組みを超えた革新的なエイジングケアの実現に挑戦していくとしている。
なお、研究成果の一部は、3月26〜29日に大阪で開催した第146回日本薬学会にて発表した。
























