コーセーは、お客自身のiPS細胞（※1）からの抽出成分「iPSF」を配合したパーソナライズ美容商品（※2）の開発・提供を目指してアイ・ピース社（ I Peace, Inc.、本社：米国パロ・アルト、創設者・CEO：田邊 剛士）、レジュ社（Reju, Inc.、本社：東京都港区、CEO：神谷 友里江）と技術提携することを発表した。5月8日に開催した記者発表会では、３社からそれぞれ新事業について説明した。
この開発は、お客にとって“わたしだけ”の美容商品をかなえるため、自身の血液などから採取した体細胞からiPS細胞を作製し、そこから抽出された成分を美容商品として利用する。
iPS細胞は作製過程で細胞の若返りが起きるため、自身の若い時と同様に活性化した細胞を活用できるメリットに加え、自分自身のiPS細胞から得られる「iPSF」は生体適合性が高く、安全性が高いという利点がある。
体細胞から個人のiPS細胞を作製し、培養・管理する部分はアイ・ピース社が担い、同社が既に個人向けのiPS細胞のバンキング事業で行っている、安全で効率的な作製・管理プロセスを活用。美容商品に配合される「iPSF」の製造と提供はアイ・ピースと技術提携をしているレジュが担うことになる。
コーセーは、これらを美容商品として配合するとともに、成分面だけでなく、剤型もお客の好みに合わせた商品提供を行う考えだ。例えば、みずみずしい使用感を好む人にはジェル剤型、乾燥が気になる人にはクリーム剤型など、製剤でかなえられる付加価値や使い心地、感触といった感性面での満足を提供する。
体細胞の採取や、「iPSF」と製剤の調剤などは同取り組みに協力する医療機関が担い、2024年内に実証実験を開始。今後、医療機関を通じて2024年内から技術面・事業面における実証実験を開始する予定で、26年度内にサービスを提供開始できるよう進める計画だ。個人のiPS細胞を使った美容商品の展開は国内初となる。
発表会では、アイ・ピース社の田邊剛士Founder＆CEO、レジュ社の神谷友里江CEOとともに、コーセーの原谷美典取締役経営企画部長と田中健一経営戦略室長が登壇。業界の中でも早期にiPS細胞に取り組んできたという同社の歩みと、今回の事業提携に至る経緯、ならびに新規事業の概要について説明し、「今回の事業としての展開を見据えたiPS細胞の活用ですが、21年からアイ・ピース社の田邊CEOとは3年にわたる議論を行っており、実証実験を開始しようという結論に至りました。当社の冷凍化研究で培った知見や化粧品製造の技術、最先端のiPS細胞の技術を持つアイ・ピース社やレジュ社、この3社の組み合わせでしかできない可能性を実証していきます」（原谷部長）、「今回この3社の強みが合わさることによりiPS細胞バンキングとパーソナライズ化粧品の課題が工夫され、これまでに例がない新しい利用ソリューションを提供できると信じております」（田中戦略室長）と、新事業への意気込みを語った。
（※1） 様々な組織や臓器の細胞に分化し、ほぼ無限に増殖する再生医療への応用が期待されている幹細胞のひとつ
（※2） 本事業の商品は薬機法で定められる化粧品ではなく、医療機関を通して医師の管理の下に提供される美容商品
