ポーラ化成工業は2024年12月12日、横浜事業所の敷地内に新設したテクニカルディベロップメントセンター(TDC)を報道陣に公開した。一言でいうと、TDCはハイレベルなものづくりを行う拠点だ。実験室での処方・製剤開発から大規模生産技術の開発、その次の生産まで一気通貫で行える。ものづくりの現場では、ビーカー内で成功した技術を大量生産する時に不具合が生じるのが常だが、TDCの場合は3階の実験室で成功したら、そのまま1階、2階の生産フロアで量産を試すことが可能。ものづくりのPDCAが超高速回転するのは、化粧品技術の先端を走るポーラ化成工業のアセットを最大化することができるからだ。「混ぜるだけでなく、砕く、溶かす、沸かす、ちぎるを活用し、差ではなく、違いを生む新剤型・生産技術の開発ができる」と横山浩治TDC所長は意気込みを語った。
ポーラ化成工業は、報道陣に対してウルトラファインバブル(UFB)の体験を用意した。同社は刺激性のない究極の洗浄成分として「空気」に着目。空気は自然に消失し、肌の上に残らないため、刺激を引き起こすことがない。UFBは髪の毛の700分の1程度の超微細な泡を液体中に分散させたもの。同社は、①化粧品原料を用いることでUFBの安定性を向上させる技術の確立②優しい力で洗浄力を発揮する安定かつ高濃度のUFB製剤の開発③肌に対するUFBの無刺激性および浸透促進効果の実証――にチャレンジした。
化粧品に配合した高濃度UFBは、油を水中に分散する能力に優れていることの示唆を得た。UFBの空気が油を包み込むメカニズムが考えられるという。この性質を活用すると、空気による乳化「気相乳化」ができるようになる。TDCの稼働により、従来の乳化とは全く違う、新しい乳化方法の確立への道筋が見えてきたというわけだ。
そのほか、iPS細胞から一人一人の個性を反映した皮膚を精製する「ミラースキン」についても詳細に説明。培養中の細胞を見せながら、多様な個性を持つ研究員が自由闊達な議論を行う中で成果が生まれた、と研究秘話を語った。この技術は「第34回 国際化粧品技術者会連盟(IFSCC)世界大会」のポスター発表部門で最優秀賞を獲得。TDCを拠点にポーラ化成工業は、化粧技術の無限の可能性を証明し続ける。★
グループ各社の特色を理解し、ブランド価値に合う商品を開発する。この引き出しの多さもポーラ化成工業の強み
月刊『国際商業』2025年02月号掲載