日本メナード化粧品は、藤田医科大学医学部 応用細胞再生医学講座および皮膚科学講座と、シミのメカニズム解明に向けて共同研究を進めている。これまでの研究では、シミ部位において表皮と真皮を隔てる「基底膜」が脆弱化するメカニズムを見出してきた。今回、この基底膜の脆弱化によってメラノサイトが活性化し、メラニンを過剰に生成していることを発見した。つまり、シミの改善には、基底膜の脆弱化を解消することが重要であると考えられた。

皮膚のシミは、紫外線などの影響によってメラノサイトがメラニンを過剰に生成することで生じる。また、シミがある部分は、表皮と真皮を隔てる基底膜が脆弱になっており、真皮にもメラニンが落ちていくことが報告されている。同社は以前の研究で、シミ部位において基底膜が脆弱になるメカニズムを発見した。

今回は、基底膜の脆弱化がメラニンの生成にどのような影響を与えるのか研究した。その結果、メラノサイトは通常、基底膜に接着して存在するが、基底膜が脆弱化すると基底膜に接着できなくなり、その結果、メラノサイトが活性化し過剰にメラニンを生成するようになることがわかった。この発見から、基底膜を正常に保つことは、表皮のメラノサイトの活性化を抑制し、シミを防ぐことにつながると考えられた。

今回の研究では、基底膜の状態がメラニンの生成に関与するという新たなシミのメカニズムを見出した。なお、本研究成果は2025年3月26~29日に福岡で開催される日本薬学会第145年会にて発表する。

シミ部位では、基底膜の主要成分であるⅣ型コラーゲン(COL4)が減少して基底膜が脆弱になっており、真皮にまでメラニンが移行している(図1)。同社はこれまでに、基底膜の脆弱化が起こるメカニズムを研究し、真皮に移行したメラニンが真皮幹細胞に取り込まれると、真皮幹細胞が本来持っている基底膜修復機能が低下することを発見している(図2)。今回の研究では、基底膜の脆弱化がメラニン生成に及ぼす影響を検証した。

図1 非シミ部位・シミ部位における基底膜の状態とメラニン分布

図2 シミ部位で起こっている基底膜脆弱化のメカニズム

シミ部位ではメラノサイトが活性化しており、メラニンを過剰に生成するとともに、樹状突起を伸ばして周囲の細胞にメラニンを活発に受け渡していることがわかっている。

シミ部位のメラノサイトの活性化と基底膜との関連を調べるため、正常な基底膜(COL4あり)と脆弱化した基底膜(COL4なし)をシャーレで再現し、メラノサイトの培養を行った。その結果、脆弱化した基底膜(COL4なし)で培養したメラノサイトでは、樹状突起が発達し活性化している様子が観察された(図3)。さらに、メラノサイトの活性化に関与するMITF(Microphthalmia-Associated Transcription Factor)と呼ばれる転写因子の発現が増加するとともに、メラニン生成に関わる酵素チロシナーゼ(TYR:Tyrosinase)の発現も増加していた(図4)。

図3 基底膜脆弱化によるメラノサイトの形態変化

図4 基底膜脆弱化によるメラノサイトの遺伝子発現変化

また、正常な基底膜(COL4あり)で培養したメラノサイトに、基底膜とメラノサイトの接着を阻害する物質(DDR1阻害剤)を添加すると、MITFやTYRの発現が増加することも確認した(図5)。

以上の結果から、メラノサイトは基底膜に接着して存在することで、メラニンの生成が正常に保たれることがわかった。つまり、シミ部位では、基底膜の脆弱化によりメラノサイトが基底膜に接着できなくなることで、メラノサイトの活性が高まっていると推測される。(図6)このことから、基底膜を正常に保つことは、過剰なメラニン生成の抑制につながると考えられる。

図5 基底膜との接着によるメラノサイトの遺伝子発現変化

図6 基底膜脆弱化によるメラノサイトの活性化メカニズム