ライオンは、6月4日~10日の「歯と口の健康週間」を前に、オーラルケアメディアセミナー「歯科健診のメリット」を6月1日に開催した。企業における歯科健診は6割以上が実施していない現状がある中、企業に歯科健診を導入するメリットを調査した研究結果を説明。歯科健診をきっかけとするオーラルケア行動の変容が、従業員の生産性向上に寄与する可能性が明らかになったと報告した。
登壇したライオン研究開発本部口腔健康科学研究所の山本悠氏は、ライオンが日立製作所日立健康管理センターと協働で行った、企業における歯科健診の導入が従業員の口腔・全身健康に及ぼす影響に関する調査研究の結果を報告。これまでの研究から、歯科健診の導入により、オーラルケア行動(1日の歯磨き回数、フロス使用率、歯科通院率)が経年的に増加することが明らかとなった。さらに、企業に歯科健診を導入することで、従業員の口腔健康状態が経年的に改善することがわかった。
今回の研究では、新たに従業員のオーラルケア行動と生産性との関連性を解析。企業においては、これまで健康関連コストとして、医療費やアブセンティーズム(病欠)が重視されてきたが、現在はプレゼンティーズム(仕事はしているが、なんとなく調子が悪くて本来の実力を発揮できていない状態)が注目されている。
研究では、オーラルケア行動の実践頻度と従業員の生産性の指標の一つであるプレゼンティーズムの変化を検証。その結果、オーラルケア行動が増加した群では、そうでない群と比較して、有意に従業員のプレゼンティーズムが改善していた。山本氏は「企業における歯科健診の導入が、従業員の健康増進だけでなく、生産性の向上にもつながる可能性がある」と説明した。
続いて、大阪大学大学院歯学研究科口腔治療学講座の村上伸也教授と日立製作所日立健康管理センターの中川徹センター長の対談動画を放映。「歯科と全身の関係性や、歯科と生産性の関係性が科学的な背景を持ったデータとして得られた。自分のちょっとした(オーラルケアの)努力で自分が幸せになれることが好循環となり、生産性の向上に反映されたのではないか。企業が生き生きするためにも歯科健診を導入してほしい」(村上教授)、「オーラルケアとプレゼンティーズムの統計学的に有意な結果に驚き、世界でもないデータだと思っている。職場で歯磨きができる環境を整備することが大事だ」(中川センター長)と、企業における歯科健診の重要性を語った。
ライオン歯科衛生研究所の久保田好美氏は、歯科健診のメリットと歯周病早期予防の重要性について説明。歯を失う原因は歯周病が多くを占めると指摘し、歯茎の状態が「赤みがある」「やわらかい」「丸く厚い」「軽い刺激でも出血しやすい」のうち、一つでも当てはまると歯周病(歯肉炎)の可能性があると指摘した。さらに妊娠している女性が歯周病に罹患している場合、低体重児および早産のリスクが高くなることなども報告。「企業や自治体の歯科健診を活用して、歯周病を早期から予防してほしい」(久保田氏)と呼び掛けた。
月刊『国際商業』2023年08月号掲載