資生堂は、宇宙環境で使用する化粧品の展開を目指し、独自設計したスキンケアを、2025年3月15日に国際宇宙ステーション(ISS)に搭載した。同社の「Second Skin」技術(※1)を応用し、肌と一体化する人工皮ふを形成する2剤式の美容液(図1)は、宇宙という過酷な環境でも肌のうるおいを守り、すこやかさを保つことを目指し開発された。宇宙環境において水は貴重な資源だが、地球でも環境の変化により水の重要性が増している。同社はこの背景を踏まえ、「水に頼らない次世代スキンケア」という発想で研究を進めた。これにより、肌の表面に気体透過性を持つ薄い人工皮ふ膜を形成することで、肌から蒸散する水分を膜の内側に留め、肌本来の水分でうるおいを保つといった循環型の保湿機能を実現した。また、この膜は剥がす際に皮脂や古い角層を取り除く洗浄効果も有している(図2)。これらの技術を活用することで、限られた水資源の中でも効果的なスキンケアを可能にすることを目指す。

図1:ISS内で撮影された宇宙環境用スキンケアの写真

図2:宇宙環境用スキンケアの保湿メカニズム(左)、皮脂と古い角層の除去メカニズム(右)イメージ
動画:https://corp.shiseido.com/jp/r/yt/20250819/01/?rt_pr=trt23
JAXA宇宙飛行士 大西卓哉氏は、同宇宙環境用スキンケアを使用した際の感想コメントを寄せた。
「宇宙では水は貴重な資源です。肌自身の持つ水分で保湿ができるスキンケアは、乾燥しがちな宇宙船内の環境に適していると思います。剥がす際、肌の古い角層を一緒に取り除いてきれいにしてくれるそうで、水を必要としない洗浄機能は、ISS内ではありがたい機能の1つです」
動画:https://www.youtube.com/watch?v=x1G0ns6mNkk
※1「Second Skin」技術について
資生堂は18年に米国ベンチャーOlivo Laboratories社の特許技術「Second Skin」を取得し、資生堂の強みである処方開発技術と組み合わせて、その機能性を進化させてきた。「Second Skin」技術は肌と一体化し凹凸を補正する人工皮ふを肌上に形成するもので、目袋やたるみを短時間で目立たなくするなど、従来の化粧品の枠を超えたビューティーケアの可能性を見いだしている。また、この技術を応用し、スキンケアやメイクなどといった横断での活用を進めている。
資生堂は地球上での様々な過酷環境に留まらず、宇宙環境での利用においても、すこやかで美しい肌を届けることを目指し、企業使命「BEAUTY INNOVATIONS FOR A BETTER WORLD(美の力でよりよい世界を)」の実現に向け、革新的な価値創出をさらに加速させていくとしている。