日本メナード化粧品は、肌表面を覆う角質を用いて代謝物を幅広く解析する「メタボローム解析」を行い、肌が衰える要因を捉えることに成功した。また、その結果から、加齢に伴う肌の機能低下を抑え、老化を防ぐアミノ酸を見出した。本研究の成果は2025年3月26~29日にかけて福岡で開催される日本薬学会第145年会にて発表する。

生物は、取り込んだ栄養素をもとにエネルギーやさまざまな物質を産生して生命活動を行っており、このとき産生される物質(代謝物)は総称してメタボロームと呼ばれる。体内の状態が変化すると、産生される代謝物に変化が生じるが、具体的にどの物質がどのように変化するのかについては不明な点も多く、現在、代謝物から組織の状態を捉える研究が進められている。メタボローム解析は、そのような生体内の代謝物を網羅的に解析する技術である。

メタボローム解析によって代謝物を幅広く解析し、その変化から生体内の状況を把握したり変化をとらえたりすることができると考えられている。例えば、血液や尿をメタボローム解析することで健康状態を調べたり、細胞培養した培養液をメタボローム解析することで細胞全体の状況を知ることができたりする。

同社は肌の角質に着目し、メタボローム解析によって老化に伴う肌の代謝の変化をとらえ、肌が衰える要因を推測することを試みた。角質細胞は、表皮の細胞(角化細胞)が新陳代謝により肌表面に押し出された細胞であるため、肌内部の代謝の状態を反映していると考えられる。

肌内部の代謝変化が肌表面に現れるイメージ

また、角質は、粘着テープを用いたテープストリップという方法で肌に大きな負担をかけることなく採取できるため、解析法が確立すれば手軽に肌の老化状態や内部の代謝状態の推測が可能になり、美容提案などへの活用が期待される。

今回、初めに、人為的に自然老化または光老化させた培養角化細胞に対してメタボローム解析を行い、細胞の状態を解析した。その結果、老化した細胞では、アミノ酸や脂質などの代謝機能が低下し、その一方で解糖系と呼ばれるエネルギー産生の代謝経路が活性化していることを確認した。

次に20代から70代の女性73名の頬から粘着テープで角質を採取してメタボローム解析を行った結果、加齢に伴って解糖系の代謝により産生される乳酸が増加し、アルギニンなどのアミノ酸が減少していた。この変化は、細胞を用いた実験で確認された代謝経路の変化にも即しているため、肌の老化に伴う変化だと考えられる。さらに、アルギニンなどのアミノ酸は、その量が少ないほど肌の水分量が少ないこともわかり、アミノ酸の量と肌の水分量に相関関係があることも見出した。つまり、これらのアミノ酸が肌老化に関係しており、これらのアミノ酸が関わっている代謝が低下することで細胞の機能が低下し、肌のうるおいの低下につながっていることが考えられる。

角質を用いたメタボローム解析

また、メタボローム解析で老化による代謝変化が確認された複数のアミノ酸を組み合わせ、培養角化細胞に添加した結果、保湿に関わるセラミドの合成酵素やNMF(天然保湿因子)のもととなるタンパク質(フィラグリン)の遺伝子発現量が増加した。

アミノ酸による細胞の機能向上効果

同じアミノ酸を配合した皮膚外用剤を11名の女性被験者(30~59歳、平均45.0歳)が1カ月間使用した結果、肌の水分量が増加することを確認した。したがって、今回見出したアミノ酸は、肌の代謝活性を高め、老化による肌の機能低下を抑制すると考えられた。

アミノ酸配合製剤の使用試験結果