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柔軟仕上剤は花王優性の状況

2024年の柔軟剤市場は、ライオンの「ソフラン エアリス」廃番が大きなニュースだった。発売は23年4月6日で、24年末で終売。柔軟剤市場の潜在需要を掘り起こす、とライオンが満を持して投入した大型商品は、わずか1年半の短命で終わった。敗因は広告投下量が競合の花王、P&Gに及ばず、思うように認知拡大が進まなかったこと。日本の柔軟剤市場の課題は海外に比べて販売価格が安く、利幅が薄いことにある。商品の販売量が伸び悩むと収益性が悪化するから、ライオンのファブリックケア事業は、「ソフラン エアリス」廃番を機に脱マス戦略に大きく舵を切った。それでもライオンのシェアが微減にとどまったのは、ソフランの既存品の消臭タイプや高残香タイプに根強いファンがいるからだ。

一方、P&Gは24年8月発売の「レノアリセットセラム」で、衣類のセラム(美容液)を配合し、洗えば洗うほど衣類を修復し、傷んだ表面が再び滑らかになる新価値を提案。これが功を奏し、微減ながら2位を守った。

P&Gとライオンがわずかながら減少したのに対し、トップシェアの花王は微増。巨大市場の衣料用洗剤で勝つために投資の選択と集中を図った上での伸長に、同社の強さが表れている。

20年以降、衣料用洗剤市場は伸長が続いている。24年は首位の花王、追うP&Gが共に成長し、市場拡大をけん引した。

両社ともに、衣類に付着する菌に着目し、生活者ニーズに応えた。例えば、花王は、24年4月に主力商品「アタックZERO」を改良リニューアルした。コンセプトは「無菌レベルの消臭力」。除菌・抗菌・煮沸でも落とせなかった匂い戻りの原因であるバイオフィルムに着目し、一度の洗濯でバイオフィルムを除去できる性能を実現した。

また、24年6月に「アタック抗菌EX」のラインアップに「ラク干しプラス」を追加。抗菌、防臭、防カビに加え、独自の洗濯シワ防止技術を用いた「からまり防止」の新価値を提案した。注ぎやすい新形状の「超フィットボトル」を採用した「アタック除菌アドバンス」の改良発売も売り上げ増に貢献し、アタック全体で前年比16%の増収になった。

一方、P&Gは、これまでの菌・ニオイ対策である除菌・抗菌とは異なり、洗った後も菌を増殖させない新ジャンルを提案して、花王に対抗した。布上で菌が増殖できない環境をつくり、洗濯後も菌予防をかなえる特許技術を活用。特に汗をかく夏場、蒸れてニオイが気になる衣服やくつ下、ため込んでしまった洗濯物の菌・ニオイを予防。さらに洗濯槽のカビやタオルや肌着の黒ずみも予防する、従来の機能と一線を画す洗濯洗剤として、24年6月に濃縮液体洗剤「アリエール MiRAi(ミライ)」シリーズを発売した。

さらにP&Gは、手軽な洗濯を提案する衣料用洗剤ブランド「ボールド」の「ジェルボール4D」から、タオルや普段着を30回洗っても、新品のような肌ざわりを実現する商品を24年10月上旬に発売した。このように衣料用洗剤は両社の鍔迫り合いが続いているが、流通関係者によると「花王がやや優勢」との声。2強の激しい競争は、付加価値品の登場を促すため、市場拡大は止まりそうにない。