外国籍の女性社員がMBA取得に挑戦

「国際女性デーは、とても大切にしている」と廣藤代表執行役の言葉は熱を帯びた。国際連合(国連)が制定した国際女性デーは、1904年3月8日にニューヨークで女性たちが婦人参政権を求め起こしたデモをきっかけに提唱された「女性の自由と平等のために戦う記念日」が起源である。国際女性デーは、ジェンダーの壁を越えて女性の生き方を考える人々が増えるから、資生堂のDE&Iに関する情報を届ける絶好の機会になるのは間違いない。

資生堂のDE&Iの取り組みは多岐にわたる。これが企業価値、競争力を高めることにつながっている

資生堂は2024年3月8日の国際女性デーに合わせて、本社と地域本社(日本、中国、アジアパシフィック、米国、欧州〈中近東とアフリカ地域を含む〉、トラベルリテール)が連動して、ジェンダー平等の自分事化を促す社員参加型イベントを開催したり、DE&Iを強く推進し女性活躍で先頭を走る企業として、社会を巻き込む取り組みを展開した。

その一つとして、投資銀行を経て資生堂に入社し15年以上がたった廣藤代表執行役が、資生堂アメリカズからグローバル本社に転籍したBea Asavajaruグループマネージャー(当時)らと資生堂のDE&Iに関する経験談を語り合うトークセッションを開催した。

その中で廣藤代表執行役は「(働きながら育児をする中で心掛けていることは)常にパーフェクトでいようとせずに、必要な時には周囲や外部にサポートを求めることです。(中略)自分を追い込んで一人で全てを解決しようとしなくてよい、これは私が体験したラーニングでもあります」と語っているが、これは男女を問わず家庭でも職場でも同じことであろう。

後日談として、この企画を通じて登壇社員は出会い、親交を深め、頻繁に連絡を取り合う仲になったという。そしてBea Asavajaru氏は、米国大学のMBA留学にチャレンジし、合格。今は勉学に励んでいるが、MBA取得後は資生堂に復帰する予定だ。

「Beaさんは、資生堂の哲学や文化に共感し、帰属意識が高くなっています。ですから、自らのスキルを一段と高めるためにMBA留学にチャレンジし、そこで得た知見を資生堂で生かすために戻ってきてくれるのです。このような好循環を世界中の資生堂の組織で無数に生み出せることが、DE&I推進の重要な理由だと思います」(廣藤代表執行役)

一方、従業員リソースグループ(従業員有志による活動)によるボトムアップのDE&I推進も強化している。例えば、24年はLGBTQ+と障がい者雇用をテーマに、当事者が思いを語るオンラインセミナーを開催。LGBTQ+の回は約1000人、障がい者雇用の回は約800人が視聴するなど、想定以上の集客になったという。「当事者がオープンな場で気持ちを話す機会を全社員に提供するのは、初の試みでした。ですから、社員の関心は高く、よりDE&Iの現状を改善する意識が組織に広がり始めていると思います」と資生堂DE&I戦略推進部DE&Iエンパワメントグループの岡林薫グループマネージャーは説明する。

資生堂 DE&I戦略推進 DE&Iエンパワメントグループ 岡林薫 グループマネージャー