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多様性の尊重が競争力を育む

資生堂はダイバーシティ・エクイティ&インクルージョン(DE&I)を経営戦略の柱に置いている。同社の企業使命「BEAUTY INNOVATIONS FOR A BETTER WORLD(美の力でよりよい世界を)」の実現には、ビジネスを通じた社会価値創出と社会課題の解決の両輪を回すことが必要である。その要は、多様な知の融合が生むイノベーションである。そのためには社員だけでなく、生活者を含む多様なステークホルダーが異なる価値観を尊重し合いながら共感することが必須。だから資生堂は、DE&Iを重要な経営戦略の柱に掲げ、ジェンダー、年齢、国籍、性的指向、性自認、障がいなどの多様性を尊重し合い、イノベーションを生み出す文化の醸成に力を入れている。資生堂チーフDE&Iオフィサーを務める廣藤綾子代表執行役は次のように説明する。

資生堂 チーフDE&Iオフィサー 廣藤綾子 代表執行役

「グローバルカンパニーを目指している資生堂は、全ての社員が生きいきと働き、思う存分、活躍できる環境を整えることが必要です。例えば、資生堂アメリカズ(米国、カナダ、中南米全域を担当する地域本社)などの各地域本社で採用された優秀な人材が活躍の場を広げたいと願った時、次のステップとして東京にあるグローバル本社に異動してグローバル全般の業務を担う職種に就くなどの門戸が開かれています。資生堂と出会い働くことを選んだ世界中の社員が、豊かな人生やキャリアが過ごせるようにして、会社全体の競争力を高めるために、DE&Iの推進が必要なのです」

資生堂のDE&I戦略には三つのアクションがある。「ジェンダー平等」「美の力によるエンパワーメント」「人権尊重の推進」で、いずれも女性活躍や化粧によって人々を勇気づけてきた資生堂のこれまでの経験と知見を生かせる領域である。

特に「ジェンダー平等」では、DE&I戦略推進部が2023年に立ち上げた「資生堂DE&Iラボ」の活動成果が出始めている。同ラボは東京大学の山口慎太郎教授のチームと共同研究を行っている。資生堂グループは80%以上が女性社員。そのうち女性管理職はグローバルで58.8%を占めている。取締役会の女性比率は45.5%、日本国内の女性管理職比率は40.0%(24年4月時点)で、文字通り、日本を代表する女性活躍推進企業である。同ラボは、この資生堂が持つ社員の意識や働き方を改革するDE&I推進のノウハウを生かし、共同研究を実施。組織のリーダーのジェンダーバランスの偏りがアンコンシャスバイアス(無意識の偏見)を強める可能性を示したほか、ジェンダー平等をテーマにした調査では、社員の男女差が成果に影響しない一方で、難易度の高い役割を担う確率が男性に偏る組織があることを明らかにした。

このような共同研究の成果は、多様な人材の活躍と企業成長の関係を可視化し、資生堂のインクルーシブな組織づくりとイノベーションの実現に役立てるだけでなく、日本社会のDE&I推進に貢献するために社外に積極発信している。24年に公式ウェブサイト「資生堂DE&Iラボサイト」を開設したのは、その一例である。

「ラボの研究の一環として、資生堂の各組織の男女バイアスの強さを測定した結果、女性の方がジェンダー平等を自分事として捉えているものの、無意識に女性の理想像を自分に課しており、女性自身にアンコンシャスバイアスが根強いことが分かりました。これまで私たちは女性活躍推進を徹底的に追求してきましたが、何が足りないのか、そう考えた時に、家庭のジェンダー平等を後押ししなければ、職場のジェンダー平等も頭打ちになることに気が付いたのです。これはジェンダー平等に限らず、DE&I戦略全体の推進にとって重要な視点ですから、積極的に社内外に情報やノウハウを発信するようにしています」(廣藤代表執行役)