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ヘアケアの成功事例は化粧品でも生きる
――2025年1月1日付で、花王グループの化粧品事業トップに就任。カネボウ化粧品初の女性社長と大きな話題になっています。
内山 私自身も予想しておらず、驚いています。02年4月、花王に入社した後、16年間は研究に携わっていました。研究時代も化粧品は担当していなかったので、今回の人事には誰よりも驚きました。
――花王の長谷部(佳宏)社長からは、どのようなことを期待されていると思いますか。
内山 まずは新鮮な目で、事業全体を俯瞰して見て、成長戦略を描くことだと思います。もう一つは、花王グループが持つ多様な研究知見を化粧品事業に応用することではないでしょうか。例えば、化粧品専用のケア剤もありますが、じつはそれ以外のケア剤も花王にはたくさん知見があります。皮膚研究は化粧品分野以外でも取り組みが進んでいます。それらを幅広く把握できているのは、私の強みだと思います。
――技術の融合が進むと、花王グループらしい化粧品事業の姿が見えてきそうです。
内山 花王とカネボウ化粧品は同じ化粧品事業とはいえ、個性が違います。カネボウ化粧品は華やかで、情緒的な価値が際立っている。花王の化粧品は研究とエビデンスを重視しています。それを無理やり融合だけしても、逆に個性を失うでしょう。それぞれのブランドの個性を活かしながら相乗効果を発揮していきたいと思っています。さらに、ブランドや商品を裏側で支えている研究や生産は共通化できる。そこに花王グループの強みがあります。
――内山流のマネジメント手法に特徴はありますか。
内山 私のキャリアを振り返ると、19年以降、ヘアケア研究所、ライフケア事業部門の基盤開発、ヘアケア事業部など、異動を多く経験してきました。研究所時代も多様なカテゴリーを担当していましたので、異動先では仲間たちの知識と経験を借りなければ、前に進めないことが多々ありました。その意味で言うと、チームみんなの力を集結して、課題を乗り越え、成長することが、私のスタイルなんだと思います。
――それを今回は、日本のみならず、グローバル規模で行うことが求められますね。
内山 生活者起点に立ち、国・地域の現場への権限委譲は強く意識しています。ブランドのパーパスは約束事ですから、世界共通の一気通貫を守ります。その一方で、生活者に伝えるプロモーション戦略まで足並みをそろえると、現地の生活者の気持ちや習慣からズレてしまう可能性があります。それぞれの国・地域で起こっていること、現地法人の目標などをヒアリングした上で、これからの戦略を考えます。自走できる現地法人があれば、どんどん任せることで、化粧品事業全体に活力を与えてほしいですね。
――直近のヘアケア第1事業部長の時、「とろけたって、いいんです。」のキャッチコピーで、休みながら美しく〝休息美容〟を提唱する「melt(メルト)」、花王100年のヘアケア研究から導き出した美髪5大必須成分を配合した「THE ANSWER(ジアンサー)」という二つの新ハイプレミアムブランドを発売。前者は情緒的な価値、後者は機能的な価値を打ち出していますが、これは化粧品事業に応用できるのではないでしょうか。
内山 ヘアケアの新ブランドに取り組む時、最も気を配ったのは、ブランドのコアを先に決めることです。ヒーローアイテムやターゲットの気持ち、求める体験価値などを明確に定義し、それを実現するのに必要な技術、香り、容器などを組み合わせました。そして発売後のマーケティングでは、消費者の興味・関心の度合いを見ながら、流通各社と連携しながら売り場づくり。新ブランドの希少性を維持しながら、生活者の興味・関心を喚起しました。このような手法は、花王グループの化粧品事業の戦略を考える際に応用できると思います。プレステージブランドは希少性も大事ですから、急速な売り場拡大は避けたい。一方、マスブランドは時代の変化を捉えながら顧客接点を広げることが必要です。