ファンケルと弘前大学の研究グループは、弘前大学が実施する「岩木健康増進プロジェクト健診」で得られた健康ビッグデータを活用し、フレイルに関与する自律神経機能や生活の質(=Quality of Life、以下QOLと表記)の向上に関する因子を調査した。
その結果、自律神経機能の一つである心拍変動は、加齢や肥満に伴って低下するとともに、生活習慣病関連因子や腸内細菌叢に関係していることを発見。さらに、生活習慣病関連因子の一つである糖化マーカーが、QOLに関連していることも発見した。
これらの研究成果は、第21回日本抗加齢医学会総会(2021年6月/於:京都府)、第32回日本疫学会学術総会(2022年1月/オンラインのみの開催)、第23回糖化ストレス研究会(2021年8月/於:熊本)でそれぞれ発表した。また併せて、国際学術誌MDPIの以下3誌①「Healthcare」②「Metabolites」③「International Journal of Environmental Research and Public Health」に研究結果について掲載された。
「人生は100年」と言われる昨今では、年齢を重ねても元気に充実した生活を送り続けられる心と体づくりが望まれ、近年は中でも「フレイル」が注目されている。「フレイル」は、適切な介入や支援を行うことで、生活機能の維持向上を可能とし、予防することができると考えられる。同研究では、岩木健康増進プロジェクトの健康ビッグデータを活用し、「フレイル」に関連していると考えられる自律神経機能やQOLの関連因子を明らかにするとともに、「フレイル」を予防する方法を調査してきた。
「岩木健康増進プロジェクト健診(2019年度実施)」で、自律神経機能を測定した987人を対象に、自律神経機能に関連する因子を多変量解析で調査をした。その結果、自律神経機能の一つの因子である心拍変動は、生活習慣病関連因子の加齢や肥満指数に加え(図1)、血圧、血糖値、中性脂肪、腎機能、糖化マーカーに関係し、これらの数値が高い人ほど、自律神経機能が低くなることを確認した(表1)。
また、同様に心拍変動と腸内細菌叢の測定者950人を多変量解析で調査した結果、腸内細菌の多様性が高く、腸内細菌叢中の酪酸産生菌が多いと、心拍変動が高いことを確認した(表2)。さらにQOLスコアを調査した1053人を対象に、QOLに関連する因子を多変量解析すると、生活習慣病関連因子である糖化マーカーが高いと、QOLのスコアが低くなることも確認した(表3)。
これらの結果から、フレイルの予防に関連する自律神経機能の維持や向上のためには、生活習慣病対策や腸内細菌叢の改善が重要であることを発見した。また、生活習慣病対策における抗糖化は、QOLの維持や向上にも重要であることが分かった。
今後はさらに、抗糖化などの生活習慣病予防や腸内細菌叢の改善に着目して自律神経機能低下の予防やQOLの維持に貢献する研究を続ける。またその成果を生かし、QOLの向上で楽しく生きる「健康100年時代」を目指して健康長寿を実現する、新しい概念の商品開発やサービスづくりを進めていく。