膨大な遺伝子情報で美白の新知見を探索
資生堂は、独自のR&D理念「DYNAMIC HARMONY」を掲げ、五つの研究アプローチを柱に据えている。本研究はその一つである「Individual / Universal(個/普遍)」というアプローチで研究を進めており、多くのヒト遺伝子発現データを集めて解析し、肌悩みとの関連性を明らかにし、生活者一人一人を理想の肌へ導く新たな提案を目指している。今回新たな成果として、光老化(※)などの影響により後天遺伝学的(エピジェネティック)に肌がくすみやすくなるメカニズムの一端を解明した。資生堂みらい開発研究所の蘇木明日香研究員は、「肌全体への美白アプローチを可能にする重要な発見」と説明する。
※「光老化」太陽光に含まれる紫外線によって生じる「シミ・シワ」などの肌の老化現象のこと。肌老化の主要な原因とされている。
“エピジェネティクス”とは、遺伝情報の後天的な変化のことだ。イメージしやすいのは、同じ遺伝情報を持つ一卵性双生児の肌の質感や色が加齢や生活習慣の違いによって差異を起こすことだろう。資生堂は、独自に取得した遺伝子発現データと外部ビッグデータによるDNAメチル化情報データを解析した。DNAメチル化とは、エピジェネティックな遺伝子制御の一つで、遺伝子が持つ遺伝情報に鍵がかかり、適切に読み取れなくなる現象である。2種類の膨大な遺伝子情報データを独自の方法でバイオインフォマティクス解析(主に生物学のデータを統計学やプログラミングスキルなど情報科学の手法によって解析する技術)を行ったところ、抗酸化因子の一種で、黄ぐすみやメラニン産生を防ぐ作用を持つなど、肌の明るさに関連している遺伝子「TIPARP」の発現制御領域が光老化によりメチル化し、エピジェネティックに発現が抑制されるため、肌がくすみやすくなることが分かった。
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