コーセーのスキンケアブランド「米肌(まいはだ・https://maihada.jp)」の競争力に磨きがかかっている。新型コロナ禍の市場混乱でも業績は堅調で、むしろ攻勢を強めている。その強みを端的に示すのは、リピート率の高さ。一人一回限りの「14日間の米肌体験セット」初回40%割引の「定期購入サービス(解約は3回目以降)」など、多様な入り口から新客を獲得し、愛用者へ結びつけていく。この通販の成長サイクルが好循環で回り続けているから、数多くのスキンケアブランドを展開するコーセーの中でも、存在感を高めつつある。
米肌の成長、その要因はいくつかある。大前提になるのは商品力だ。基幹成分には「ライスパワー®︎No.11」を採用。医薬部外品の効能として、唯一「水分保持能の改善」の効果を認可されている。そこに1946年の創業以来、コーセーが培ってきた化粧品技術を惜しみなく投入。例えば、同社が得意とする肌への浸透技術、商品への満足度を左右するテクスチャーや香りを制御するノウハウは、米肌の競争力を支えているのは間違いない。
だが、商品力だけでは競合との差別性は長続きしない。特にコロナ禍では、化粧品業界のEC活用が加速。D2Cモデルでの新規参入も相次いでいる。競争激化の逆風に米肌が負けないのは、メーカーと顧客の顧客の声を聴きニーズを吸い上げる姿勢にこだわり続けているから。それは米肌流の表現では「既存顧客ファースト」で、その思いは「トレンドをつくるのではなく、顧客の肌に寄り添いたいんです」(コーセーマーケティング戦略部米肌事業課の岡部真由課長)という言葉に凝縮されている。
マスからパーソナルへ。新型コロナ前からスキンケアニーズは、「自分の肌を知りたい、調べて欲しい、改善したい」へシフトしている。この傾向は、新型コロナ禍のライフスタイルの変化で、自分の肌を見つめ直す時間が増えたことで、より一層、顕著になっている。
岡部課長は「通販の強みは、既存のお客さまとダイレクトに結びついていること。対面での接客ができないとはいえ、お客さまの生の声を聞く機会を持ち続けています。そこで把握した一人一人の気持ちや悩みをもとに、顧客情報を分析し、きめ細かくセグメントし、メルマガなどを通じて美容法などの情報を伝えてきました」と説明する。この積み重ねがブランドと既存客の絆を深くし、それが世に知れ渡ることで、新客が安心してトライアルする。新商品頼みや半歩先の流行の提案に賭けるビジネスモデルではないから、利益率も高く、既存客への還元策も選択肢が広がる。「私を見てくれる」という評価の定着は、米肌にとって最大の財産と言えるだろう。
21年9月発売のインナーケア「ライスパワー ジュレ」も既存会員からの強い要望から商品化したものだ。既存客へのサンプルは、定期会員様を始め定期便に事前同梱。発売前から「食べるライスパワージュレに期待感が高まる」「続けられる美味しさ」などが高い評価を得た。肌に塗る化粧品ブランドが築いてきた信頼関係は、食でも有効に作用している。
ただ、米肌は現状に満足しない。次のステップとして顧客との共創を目指す。例えば、21年4月にウェブサイトをリニューアル。その2カ月後の6月には、コンセプトストアであるMaison KOSÉ銀座の店内に初の直営コーナーである米肌メンバーズサロンをオープン。動画コンテンツの拡充や共創プロジェクトなど、新しいファン作りに挑戦している。
その一つは「米肌 Beauty Channel」で、商品開発部やビューティコンサルタントがゲストとして出演する動画コンテンツを公式オンラインショップと公式Instagramで配信し、順次動画コンテンツを拡充しながら、お客とのタッチポイントの強化を図る。米肌の主成分であるライスパワーに関する「開発者インタビュー」やベストセラーである「コンシーラーの使い方講座」など、ブランドを多様な切り口で紹介することで、興味喚起や理解促進を狙う。今後は月3本ペースで動画を配信する予定だ。
もう一つは、「“キレイ”を話そう いっしょに創ろう ファンコミュニティ」のオープンである。米肌の愛用者同士でスキンケアやブランドについて対話ができる会員登録無料のファンコミュニティで、21年1月に開設。そのデザインを一新するとともに、KOSÉ IDとの連携を行い、同8月にグランドオープンした。今後は「プレゼントキャンペーン」「新商品レビュアー企画」、「ファン座談会」などのイベントも予定しており、お客とブランド価値の共創を目指す。コミュニティに寄せられる会員の声を商品開発やサービスのさらなる改良に活かす考えで、顧客の声に寄り添う米肌らしい取り組みである。
「動画コンテンツは、ファンコミュニティから出たリアルなファンの声や米肌チームメンバーのリアルな愛を可視化し、その熱量を届けることをコンセプトにしています。ファンの推奨こそが、新たなファンを生み出すきっかけとなるという考えのもと、少しでも米肌に興味をもってくれた人に、商品や体験を通じてブランドの魅力をお届けしていきます」と岡部課長は説明。顧客起点の発想がある限り、米肌の存在感は高まり続けるに違いない。
また、米肌の顧客獲得を加速させそうなのが、米肌の公式サイト(https://maihada.jp/site/p/ini.aspx)で11月15日にグローバルボーイズグループ・INI(アイエヌアイ)を起用した新CM「米肌 Wクレンズ」篇を公開したことだ。
INIは、101名の練習生の中から視聴者投票で11名のデビューメンバーを決定するオーディション番組『PRODUCE 101 JAPAN SEASON2』(GYAO!で配信中)より誕生したグローバルボーイズグループ。21年11月3日にデビューシングル『A』でデビューを果たし、11月13日、14日に初のファンミーティング『INI 1ST FAN MEETING』をぴあアリーナMMで行った。
INIにとって、「米肌 Wクレンズ」が初のCM出演となる。肌潤モイスチャーインWクレンズは、メイクも汚れもWで落とすクレンジング&洗顔料で、CMではWクレンズのキャッチコピー「ダブルでオトします」にかけて、メンバーが2人1組となりW主演。ペアの組み合わせ違いで全30パターンのCMが公開されている。公式サイトには全30パターンの”推しケミ(ケミストリーの略で、二人組を表現する言葉)を選べるコンテンツ「W MOVIE GENERATOR」が登場する。またCMのメイキングやインタビュー映像も公開している。さらに11月15日23時からは、全30パターンのCMをYouTubeプレミア公開にて一挙放映する。
米肌「肌潤モイスチャーインWクレンズ」は、“メイク落とし”と“洗顔”が同時にでき、洗いあがりがお米をといだ後のような“つるすべ肌”を目指したクレンジング&洗顔料であることを「ダブルでオトします」というメッセージを発信する考えで、米肌の顧客層は一気に広がりそうだ。