コロナ禍2度目の新年度となった4月1日、化粧品・日用品業界各社が入社式を行い、経営トップから新入社員に向けさまざまなメッセージが発信された。昨年は中止や延期、オンラインでの開催が相次いだが、今年は対面での開催、あるいはオンラインと対面を組み合わせた開催など各社工夫を凝らした新しい形式での入社式が行われた。

化粧品業界

〈資生堂〉
新型コロナウイルス感染症の感染拡大防止のため、会場開催とWEB中継を掛け合わせた開催方法で入社式を執り行い、資生堂、資生堂ジャパン、グループ会社に計224人が入社した。魚谷雅彦社長からのメッセージ(要旨)は以下の通り。

1.このような時代だからこそ、世界中の仲間と共に
本日、皆さんを当社の一員として迎えることができ、大変嬉しく思う。新型コロナウイルス感染症の拡大により、私たちの環境はこの1年で大きくがらりと変わった。先行き不透明な状況が続き、不安な気持ちを抱えたまま、今日という日を迎えた方もいるかもしれない。この変化の大きな年に入社したことを一つの記憶として覚えていていただきたい。

これから社会人として生活していく中で、さまざまな困難にも直面すると思うが、そのような時こそ変化を恐れず、チャレンジし続けてほしい。資生堂は、皆さんの果敢な挑戦を全力で支援する。皆さんがベストを尽くすためのサポートは、私が最もやりがいを感じていることの一つである。同じ夢を持った仲間は世界中に約4万6000人いる。これから世界中の仲間と共に、「美」の力で多くの人々を幸せに、元気にし、社会に貢献し続ける会社をつくっていこう。

2.美の力で世界を変えよう
資生堂は、「BEAUTY INNOVATIONS FOR A BETTER WORLD(ビューティーイノベーションでよりよい世界を)」を企業ミッションに掲げ、本業であるビューティービジネスを通して、誰もが幸福や自由を感じ、多様で個性に溢れた世界の実現を目指している。今年2月に発表した、中長期経営戦略「WIN 2023 and Beyond」では、スキンビューティー領域へ注力し「世界で勝てる日本発のグローバルビューティーカンパニー」となるべく、さらなる成長と発展のために進化することを掲げた。

日々変化が激しいこの時代に、この戦略を実現していくには、多様な意見や前例にとらわれないチャレンジなど、皆さんの新しい力が必要だ。真のダイバーシティが発揮されてこそイノベーションは生まれる。ぜひ、新しいイノベーションの風をどんどん巻き起こしてほしい。資生堂は来年、創立150周年を迎える。これから100年先の資生堂をリードし、つくっていくのは皆さんだ。

3.人生をより豊かなものに
仕事に費やす時間は人生の大半を占める。だからこそ、仕事を充実させることで、人生はより豊かなものになる。まずは資生堂で、「私はこれを実現したい」という目標を、自分から積極的に見つけてほしい。そしてその目標に向かって努力を重ね、常に成長し続けてほしい。それが資生堂を動かす何よりの原動力となるからだ。

資生堂は、「PEOPLE FIRST」という考えのもと、社員が一人一人の力を積極的に発揮できる環境を整えている。キャリアを切り開くのは自分自身だ。志を見失わずにチャレンジし続けた先には、必ず成長の瞬間が待っている。そして皆さんには、資生堂という会社を通じて社会の役に立つ人材になってほしいと願っている。そのためにも、多様なキャリア形成のプラットフォームとして、資生堂を存分に活用してほしい。これから皆さんがそれぞれの志を貫き、多様なキャリアを自らデザインし、切り開くことを期待している。共に、新しい資生堂の未来を築き上げていこう。


〈コーセー〉
本社にて「2021年度 入社式」を開催。今年は新型コロナウイルス感染防止対策の一環として、オフラインとオンラインを組み合わせた形式で式典を行い、出社しない新入社員については各自宅よりライブ配信にて出席した。今年度の総合職採用は36人。また、総合職採用とは別に ビューティコンサルタント職として84人の新卒採用を行い、ライブ配信を実施した。入社式では、小林一俊代表取締役社長が以下の内容の訓示を行った。

将来・未来を見据え、一人一人の改革を
今回の入社式は、初めてオフラインとオンラインを組み合わせた形式で開催したが、新入社員の皆さんの顔をしっかり見ることができたことは大変意義があると感じている。私はコロナ禍によって、世の中の進化が大きく加速されたと考えているが、皆さんにも、「今こそ、将来と未来を見据え、一人一人が『改革』に取り組むことが重要である」ということを、まずはお伝えしたい。

「不易流行」という言葉がある。これは「常に新しさを求め、変化を重ねていく『流行』の積み重ねこそ、いつまでも変わらない『不易』の本質である」ということを意味する。やはり、これも私が社内で常に説いている「変えるべきことと、守るべき(変えてはならない)ことの峻別が大切」であるということ、そして「自分自身も常に変わり続けなければ周りの変化についていけない」ということを凝縮した言葉として、ぜひ心に刻んでいただきたい。

またコロナ禍は、「真に必要とされる存在であるか否か」が炙り出され、“真価が問われ、本物だけが残る”という結果になると考えている。当社も、コロナ後も社会から受け入れられ、求められる価値を提供する企業として、社会から必要とされる存在にならなければならない。

現在、コロナ禍のなかで奮闘を続ける医療従事者へ向けた化粧品の寄贈活動を行っているが、これまでにたくさんの喜びの声をいただいている。どんなに世の中が変化しようとも、化粧品には人々の生活に彩とうるおいを提供し、心を豊かにする力があることを再認識した。その一方で、コロナ禍で、従来の「身だしなみ」以上の自己表現の要素も加わる等、化粧に対するお客さまの価値観も変わりつつあるとも言われており、そこにも新たなニーズが生まれている。コロナ禍というピンチをチャンスに変えるために、一人一人の行動や意識の変革・改革を期待する。

DXの加速とオフラインとの融合の加速とオフラインとの融合
デジタルを生かした企業変革であるデジタルトランスフォーメーションデジタルトランスフォーメーションについては、当社においてもECプラットフォームをはじめとするDXプロジェクトとして注力している。当社ではこれまで「高品質な化粧品を、店頭でのカウンセリング販売を通じて販売すること」が、われわれの強みであり事業の根幹だったが、これからはオンラインとオフラインを融合させ、アダプタビリティのあるサステナブルな商品を、デジタル体験を通じ、パーソナライズされた個々のお客さまへ、国境を越えて、きちんと販売していくということがが求められている。

新入社員の皆さんへ期待すること
最後に皆さんにお願いしたいこと、期待していることとして、デジタルの活用が進むことを見据え、ぜひ皆さんにはさまざまな“ データ ”に敏感になっていただき、それで何が言えるのかという“エビデンス視点”に裏付けられた 新たな提案・チャレンジを期待している。これまでであれば入社後は、既存の色々な仕事を覚えることが大半だったが、この大きな変化の局面に入社した デジタルネイティブな皆さんは、入社直後から新鮮な感覚や斬新な発想を生かして重要な仕事を任されるはずだ。

このコロナ禍を 明るい未来が 早く到来するチャンスと捉え、何事にも意思とエビデンスを持ち、前向きな発言ができる、ポジティブな人であってほしい。皆さん一人一人の強みを生かした活躍を、大いに期待している。

小林一俊社長


〈ファンケル〉
横浜市中区のワークピア横浜で入社式を開催。グループの新入社員50人(女性30人、男性20人)に対して島田和幸代表取締役社長執行役員CEOが以下の訓示を行った。

皆さん、入社おめでとうございます。今年は例年よりも多い50人の新入社員を迎えました。コロナ禍で厳しい経営環境が続いています。皆さんも大変な就職活動だったと思います。しかし、未来への成長のためには、若い力が必要です。これからが本当の学びのステージです。社をあげて歓迎し、期待しています。

ファンケルの未来 
まず、皆さんとともに創っていくファンケルの未来をお話します。私たちが見据えるのは、創業50周年の2030年。その時にファンケルグループの目指す姿 が「VISION2030」です。「世界中をもっと美しく、ずっと健やかに。そして世界中で愛される企業に」を目標にします。その実現のために、新中期3カ年経営計画をこの春からスタートします。国内でのコロナウイルスの感染収束はまだ見えません。先行きは不透明です。世界中が緊張感に包まれています。しかしコロナ禍を越え、未来に進まねばなりません。私たちはこの状況を「逆境はチャンス」と捉えています。立ち止まってはいけません。今年はファンケルにとって「未来につなげる挑戦」の年です。アフターコロナを見据え、多くの挑戦を続けます。その先に必ず明るい未来があります。

「グローバル化の推進」「新しいことへの挑戦」を加速します。世の中がどんどん変わる今、私たちが解消すべき「不」はたくさん存在します。現在、当社では若い社員が大活躍しています。コロナ禍を受けて、デジタルトランスフォーメーションが続く中、 オンラインでのライブショッピング、イベント、カウンセリングを戦略的に強化しています。その主役となっているのは、デジタルネイティブの入社2、3年目の先輩たちです。新しいことへの取り組みに社歴は関係ありません。むしろ皆さんのような若い社員に大きな活躍のチャンスと成功の可能性があります。

ファンケルの理念
ファンケルの創業理念は、「正義感を持って、世の中の『不』を解消しよう」。 経営理念は「もっと何かできるはず」です。 創業以来、 世の中のさまざまな「不」を解消する製品、サービスを提供してきました。仲間である従業員数は約3800人。特に、女性比率は約3分の2、女性管理職比率は約44%とずば抜けた数字です。特例子会社のファンケルスマイルの従業員をはじめ、障がいをもつ従業員はグループ全体で100人を超えました。みんなが同じ条件でイキイキと働いている会社です。

いま、コロナ禍で、新しい「不」が生じています。私たちは、「今のままで良いのではなく、もっと何かできるはず」と考え、事業に取り組んでいます。お客さまからも「ファンケルがいてくれてよかった」という嬉しいお声をいただいています。創業以来の人を大事にする経営が評価され、このほど「第11回 日本でいちばん大切にしたい会社大賞“厚生労働大臣賞”」を受賞しました。日本に星の数ほどの企業がある中、皆さんは、世の中から愛されている会社で社会人のスタートを切ることになりました。周りに堂々と自慢してください。最後に皆さんに期待することをお伝えします。

(1)ファンケルの創業の理念や経営理念、製品、お客さまのことをしっかり学んでください 。当社の製品を使って、その良さを感じてください。それを通じて、お客さまの気持ちが分かるようになるはずです。
(2)新入社員らしい「生真面目さ」と「元気」を忘れずに、同期との絆をしっかり深めてください。仲間がいるから頑張れます。同時に ライバルとして切磋琢磨してください。
(3)今日からファンケルの一員という自覚を持ってください。今日から一人一人が「ファンケル」という看板を背負っています。当社が築いてきたブランドに相応しい言動をお願いします。

皆さん、入社おめでとうございます。これから、一緒に頑張っていきましょう。以上、私からのお祝いと激励の言葉とします。

島田和幸代表取締役社長執行役員


〈ポーラ・オルビスホールディングス〉
新型コロナウィルス感染症対策実施の上で開催し、グループへ入社する新規採用69人が一堂に会した。鈴木郷史代表取締役社長からのメッセージは以下の通り。

ポーラ・オルビスグループを選んでくれてありがとう
皆さん、入社おめでとうございます。そして、沢山の選択肢があるなかで当社への入社を選んでくれて感謝します。毎年桜が咲く季節に、そして上場企業としての大事なイベント、株主総会を終えて、気持ちも新たなこの時期、こうして入社式で皆さんに会うことを楽しみにしています。

コロナ禍でも強かった個人事業主
昨年からコロナ禍で個人も企業も大きな変化を強いられました。我々のような消費財を販売する店もそうですし、特にマスコミで大きな影響を受けていると言われるのが飲食業ではないでしょうか。私も食べるのが好きなのですが、行きつけの店が営業自粛を続けています。

その中で大手チェーン店よりも、個人経営の小さな店の方が柔軟に対応し、閉店に追い込まれるのを必死に防いでいた様子がうかがえます。大きな変化に対しては小さな生物のほうが強いと進化論でも言われているわけですが、もしかして組織、事業においても同じようなことが言えるかもしれません。

当グループにおいても、個人事業主で小さな組織が強いということを知ることが出来ます。ポーラのTB事業(委託販売事業)には数千人の個人事業主がいます。過去、訪問販売から店舗販売への業態改革という大きな変化を成し遂げたオーナーの皆さんです。

コロナ禍では得意な接客やエステが出来ないわけで、それでも自在にオンラインを活用してお客さまとの関係を何とか維持したい、SNSでお店のことを発信して新規のお客さまとの接点を作りたい、そんな努力には頭が下がる思いです。

これからは個人・個性の時代
今日から皆さんは社会人になったわけですが、世間で言われている社会人像とは、こういう人たちだと妙に決めつけて、そうなろうとはしないで下さい。20数年間生きてきた中で、あなたの成長に関わった人たちから、あるいは日々の暮らしや勉学から得たであろう、物事の見方や考え方を大事にしてほしい。一言で言えば、皆さんの個性を仕事で発揮してほしいのです。グループ理念にあるように、私たちは個人の感受性や美意識を尊重しています。その実践のためにアートを取り入れた社員研修を社内やポーラ美術館でも実施しているように。個人が何を感じ、どう行動するかが、すべてなんです。

先ほど例に挙げた個人事業主のように、これから皆さんが担う仕事を、自分事として周囲の状況を見て考えてみてください。そこで生まれた課題は、きっと我々にとって新しい、今まで気づいていなかったことに違いない。そういった一人一人の個性や感受性の表現が、個性的で、正常な進化を遂げることが出来る、持続性のある企業になっていくための源泉になると信じています。

将来構想への参画を
当社グループは2029年に創業100周年を迎えます。本来であれば、それまでの長期経営計画を今年の春に発表する予定でしたが、それを一年延期しました。このコロナ禍で失ったものを取り戻すことを最優先にし、いま一度、長期計画をじっくり検討する一年にしようと考えました。10年くらい先までの計画を立てるこのタイミングでの入社、皆さんは幸せですよ。それに参画出来るんですから。

いま全社的に新規事業のアイデアを募集しています。ここにおいて老若男女の制約はありません。今後のグループの進化は、今までの選択と集中、つまり求心力から、その反作用である遠心力を働かせて事業ポートフォリオを拡げよう、ということ。化粧品に限定していません。皆さんならではの何か面白い、驚くようなアイデアをぜひ応募してみてください。

仕事での自己実現を
皆さんが当社グループを選んでくれた理由はさまざまでしょう。処遇面? 福利厚生が充実している? 女性が活躍しているから? まあ、そうであったとしても、せっかく自分を試せるよい機会を得たのです。思いっきり自分をさらけ出して、新しいことにチャレンジしていただきたい。

これから永いお付き合いになるでしょう。いつかどこかで、ここにおられる皆さんの活躍を耳にする、目にすることを期待して、以上、私から激励のメッセージといたします。