アリババは7月4日、日本のブランド向けのニューリテール戦略に関するカンファレンス「日本ブランドのための“New Retail” ―アリババグループが推進する中国小売業のパラダイムシフト―」を開催した。アリババグループのダニエル・チャンCEOが登壇し「アリババエコシステム」の最新動向や今後の可能性について紹介したほか、日本の消費財メーカーとしてライオンの掬川正純社長、資生堂の藤原憲太郎執行役員中国地域CEO、コーセーの小林一俊社長などが自社の中国事業の展開とアリババとの協業事例を発表した。

アリババグループは、デジタルを活用したニューリテール事業を推進しており、2019年会計でのGMV(流通総額)は前年比19%増の約97兆円に増加している。ダニエル・チャンCEOは、その中での日本メーカーの存在感について強調。「依然としてコスメ、サプリメントが好調であるが、近年はオーラルケア、トイレタリー、ペット商品や雑貨などにも人気の幅が広がっており、大きなビジネスチャンスの場となっている」と語った。

ライオンは、3月に中国事業を総括する社長直下組織「越境事業推進室」を発足。よりスピーディーに市場対応できる体制を整えるとともに、19年6月18日にLSTでの販売を開始。中国都市部だけでなく、農村部への拡大を強化している。同社はアリババグループとの協業において、ビッグデータによるターゲティングと、日本で得てきたライオンのさまざまな知見とを組み合わせることで精緻なターゲティングを行うことを期待している。掬川社長は「今年は昨年に比べ約1.5倍を狙っているが、21年にはこれの3倍を超える規模にまで成長させていきたい」と中国事業への期待を語った。

資生堂は1981年からの中国事業の取り組みを振り返り、現在は第四フェーズであるとし、高級ブランド、ECに集中することによって成長回復ができていると分析する。そのEC自体の位置づけも短期間で変化しており、現在はマーケティングのプラットフォームだけではなく、価値を開発するプラットフォームとしての活用に挑戦している段階だ。

資生堂は今年、アリババとの新たな取り組みとして、アリババ専用のオフィスを設置し、ビッグデータやアリババのツールを生かして、新しい製造ポテンシャルがどこにあるのか、どれだけ速く新しい商品を導入できるか、そしていかにパーソナライズにコミュニケーションできるか、それらを支えるビジネスモデルをイノベーションできないか、などを検討している。実際にその議論に参加している藤原執行役員は、「(議論は)とてもエキサイティングで、もっと事業の成長が出来ると確信している」と期待と自信を示した。

同カンファレンスの最後に登壇したコーセーの小林社長は、自社のデジタルマーケティングへの取り組みを紹介。その一つとしてアメリカのタルト社を紹介しながら、オンラインとオフラインの融合の重要性を強調。中国事業の売上高は、昨年9月からTmallにコスメデコルテを導入したこともあり、前年比2.5倍超を記録したと明かした。中国消費者の高級ブランド志向が根強いことを裏付けた格好だ。

一方、14年から導入している雪肌精は踊り場を迎えていると分析し、中国消費者の好みの変化を常に注視していくことの重要性を説いた。そして、アリババグループとの協業について、今後は中国市場でタルト社とアリババのコラボレーションの可能性を示唆。欧米だけでなく、中国においてもOtoO施策を強化していく考えを示した。