流通各社は店頭とECの両立に動く

化粧品ブランドのマーケティング戦略はデジタル対応を迫られている。その理由の一つは、化粧品の流通各社がEC強化に本腰を入れ始めたからだ。リアル店舗を基本に発展してきた化粧品の販売網は、新型コロナまん延による外出自粛、臨時休業の影響を大きく受けた。5月25日に緊急事態宣言が解除され、コロナ対策と経済活動の両輪を回す段階になっても、化粧品の売れ行きはコロナ前に戻っていない。大手ドラッグストアのウエルシアHDの化粧品売上高は前年の8掛けで推移。百貨店の三越伊勢丹も日本人の来店者数は9割まで戻ったものの、インバウンドに頼っていたブランドの落ち込みが続いている。ただ、ECに限れば、状況は違う。三越伊勢丹の化粧品オンラインストア「meeco(ミーコ)」の売り上げは休業中が前年の4倍以上、営業再開後も同2倍以上をキープ。バラエティストアのロフトのECも、3月以降は右肩上がりの増収で、6月は前年の2倍以上になった。ウイルス感染が広がりやすいとされる秋冬へのリスクヘッジとして、化粧品のEC強化は喫緊の課題に浮上している。特に化粧品のECに取り組んでいない松屋銀座は「第2波に備えて、EC強化は最優先課題」と危機感を露わにしている。

流通各社の具体的な動きはこれからだが、方向性は店頭とECの連動で共通している。例えば、ウエルシアはECで予約した商品を店舗で受け取る仕組みを2020年10月以降に導入する予定だ。店頭訴求による話題づくりを武器にしているロフトは、約500万人がダウンロードした公式アプリを通じて年間50回程度のサンプリング施策を実施。アプリに表示されるクーポンを店頭で見せるとサンプルがもらえる仕組みだが、臨時休業になると手の打ちようがないことから、「アマゾンや楽天が強いECにおいて、ロフトの特色を出す」と戦略立案を急いでいる。

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