日差しが強まり、気温が上昇するこれからの季節でも、しばらくはマスク着用が続くことになりそうだ。今回、外出時に気を付けておきたい紫外線ケアについて、資生堂グローバルイノベーションセンターの中西紘美主任研究員が、Q&A方式で説明する。

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夏に向けて気になる紫外線。美しく健康な肌でいるためには、日頃から正しい紫外線対策をすることが大切です。そこで今回は、紫外線に関する基本的な情報と、特に日常生活で心掛けるべき梅雨時期から始める紫外線ケアに関して、資生堂研究員の中西がお伝えします。

【紫外線ケアの素朴な疑問Q&A】

紫外線は365日降り注いでいますが、その量は季節・時刻・天候によって大きく変わります。紫外線ケアの素朴な疑問にQA方式でお答えします。

月別 UV-A・UV-Bの量

Q1.マスクをしていれば、日焼け止めは塗らなくても大丈夫でしょうか?

A1.マスクやサングラス、時計などをしていると、肌が隠れている部分と、そうでない部分の紫外線の当たり方に差ができ、ムラやけの原因になります。マスクで覆っていても、隙間があったり、マスクの種類によって完璧に紫外線を防げない可能性もあるため、マスクで隠れる部分も忘れずに紫外線ケアを行いましょう。

Q2.梅雨や曇りの時、日焼け止めを塗らなくても問題ないでしょうか?

A2.答えはNOです。晴れの日の紫外線量を100%とした場合、曇りの日は約65%、雨の日でも約20%の量の紫外線が降り注ぎます。太陽が見えなくても、紫外線は存在しています。屋外での日焼けの主な原因である「レジャー紫外線」とも呼ばれるUV-Bは、春から夏にかけてピークを迎えます。梅雨時期のうっかり日焼けを防ぐためにも、日常的に日焼け止めを塗る習慣をつけ、紫外線を予防しましょう。

晴れた日の紫外線を100%とすると…

Q3.一日中家で過ごす時は、日焼け止めは使わなくてよいでしょうか?

A3.生活紫外線と呼ばれるUV-Aは、雲や窓ガラスも透過し、シワやたるみの原因となります。室内や車内で過ごす際も、油断せずに日常的に日焼止めを塗ることが大切です。換気のために窓を開ければ、その分紫外線が届きやすくなります。また、紫外線が地表に届くのは、昼間だけではありません。紫外線量は、朝7時ごろから徐々に増えはじめ、朝9時には急増します。正午前後にピークを迎えた後は、だんだんと量は減っていきますが、夕方になってもゼロにはならず、午後の遅い時間まで残っています。洗濯物を干す、ベランダで水やりをするなど、短時間であっても紫外線を浴びる場合は、紫外線対策をきちんと行いましょう。

Q4.日焼け止めを塗るのが、習慣化できません。

A4.「朝のスキンケアの最後は、UVカット効果のある乳液や化粧下地で締める」をルーティンにすると、習慣にしやすくなります。また日焼け止めを塗るのが面倒という方は、手軽に塗布できるスプレータイプの日焼け止めを常備し、気づいたら塗布するのがおすすめです。最近はジェルタイプなど、すっと肌になじみ、ぬり易く心地いいテクスチャーの商品もあるので、自分の好きなタイプの商品を選び、紫外線ケアの時間をストレスなく備えましょう。

Q5.紫外線から肌を守るために効果的な色はありますか?服装を選ぶ際の参考にしたいと思ってます。

A5.紫外線を防ぐ効果が高いのは、淡い色より濃い色、また素材も厚地のほうが紫外線を防ぐ効果は高くなります。素材によってもUVカット率が違うので、それぞれの素材の特徴を知り服装を選ぶとよいでしょう。

【紫外線の基礎知識】

≪紫外線の種類≫

紫外線は、波長の長さによってUV-A(紫外線A波)、UV-B(紫外線B波)、UV-C(紫外線C波)の3つに分けられます。UV-Cはオゾン層に吸収され、地表には届きません。つまり、私たちの肌に最も悪影響をもたらすのは、UV-AとUV-Bの2つです。紫外線ダメージに負けず、健やかで美しい肌をキープするためには、UV-AからもUV-Bからも徹底的に肌を守ることが大切です。

  • UV-A
    地表に降り注ぐ紫外線の約9割を占めています。波長が長く、美しく健やかな肌の源である真皮層にまで到達し、ハリや弾力を生むコラーゲンやエラスチン、ヒアルロン酸をつくりだす線維芽細胞を傷つけてしまいます。雲や家の中、車の窓ガラスも透過して肌にも到達するため「生活紫外線」とも呼ばれます。UV-Aを浴びると、肌はゆっくりと黒くなり、弾力を失い、シワやたるみといった見た目の印象を大きく左右する肌悩みを引き起こします。
  • UV-B
    波長が短く、真皮には到達しませんが、さまざまなダメージをもたらします。屋外での日焼けの主な原因となるため「レジャー紫外線」とも呼ばれます。たくさん浴びてしまうとヤケドをしたように肌を赤く炎症させるサンバーンや、メラニン色素が沈着して肌を黒くするサンタン、長期的にはシミやシワの原因になります。

≪SPF・PAとは≫

日焼け止めに表示されている「SPF」と「PA」は、化粧品の紫外線防止効果を示す指標です。それぞれの違いをきちんと理解し、利用シーンや肌の悩みに応じて、日焼け止めを選びましょう。

  • SPF
    UV-Bを防ぐ効果を表す数値です。数値は、肌が赤くなる炎症を防ぐ効果の高さを示しています。最大値は50+。
  • PA
    UV-Aを防ぐ効果を表す目安です。+の数は、肌の黒化や弾力低下を防ぐ高さを示しています。最大値は++++。

≪日焼け止めの正しい塗り方≫

  • 顔・首
    美肌を守るためには、日焼け止めをむらなく均一に使うことが大切です。
    1.手のひらに適量をとり、顔の5ヶ所(両ほお、額、鼻、あご)に少しずつ置きます。
    2.顔のすみずみまで丁寧になじませた後、もう一度同量をとり、同じ方法で重ねづけします。
    3.首は、手のひらに適量をとり、数ヶ所にのせ、軽く広げてからなじませます。さらに最後に下から上に向かってなじませます。

日焼け止め塗り方(顔・首)

  • からだ
    1.容器から直接肌の上に線状にとります。
    2.手のひら全体を肌にフィットさせて、大きく円を描くようにやさしく広げながらなじませます。少量ずつ足したり、一度に多量につけず、塗りムラや塗り残しがないように丁寧になじませましょう。

日焼け止め塗り方(からだ)

  • 塗り忘れをしやすい部位
    髪の生え際、眉間、フェースライン、首や首のうしろ、耳や耳のうしろ、小鼻のわき、からだのわきや側面、サンダルなどを履いている時の足の甲など特に忘れやすいので、注意しましょう。

【日焼け後のアフターケア】

紫外線を浴びた後のケアは、まず熱を持った肌を「冷やす」こと。そして次に大切なのが「保湿」です。まずはほてりを鎮めて肌を落ち着かせることを優先し、その後炎症がおさまったら、徐々に保湿を意識したお手入れをしていきましょう。

  • 炎症がある場合は「冷やす」ケア
    肌が赤くなり炎症が起きている時は、軽いやけどをした状態と同じです。まずは水などで肌を冷やし、ほてりを鎮めましょう。
  • 炎症がおさまったら「保湿」ケア
    日焼けをすると、角層から水分が失われて肌が乾燥してしまいます。赤みやほてりが落ち着いた後は、化粧水で肌にたっぷり水分を補給しましょう。また、日焼け後の肌は敏感になっているので、化粧水をつける時は強く叩くようにパッティングせず、やさしく丁寧になじませましょう。化粧水をたっぷり含ませたコットンパックもおすすめです。また化粧水の使用量が少ないと、うるおいが十分にいきわたりません。使用量を確認して、適量を守って使いましょう。
  • 美白ケアで美しい肌を
    肌が落ち着いてきたら、いつものスキンケアを美白効果のある化粧水や乳液に変える、美白美容液をプラスする、美白効果のあるシート状マスクを使用するなど、自分に合った美白ケアを取り入れるのもよいでしょう。

資生堂グローバルイノベーションセンター

主任研究員

中西 紘美(なかにし ひろみ)

スキンケア商品を中心に数多くのブランド・商品の情報開発に従事。さまざまな分野の肌研究やスキンケア商品を知るエキスパート。現在はアネッサブランド担当として紫外線ケアに関わる商品開発に従事。