ポーラとオルビスの連携に驚いた
--先ほどおっしゃった経済成長依存への疑問は、国を越えた共感を呼ぶ可能性があります。
横手 結局、人の気持ちに訴える価値の在り方は、ボーダレスですよ。我々は、そこに自信と誇りを持つべきだと思います。ポーラは創業90周年を迎えるにあたり、「未来は、出会いでできている」をテーマに、ポーラが思い描く「未来の美しさに向けた出会い」を6本の映像で表現しています。
第1弾「#1 この島と生きていく ~長崎県五島市 福江島~」、第2弾「#2 夢に国境はない ~中国・深セン~」、第3弾「#3 日常にないもの ~仙台ロイヤルパークホテル~」を特設サイト(https://www.pola.co.jp/special/anniversary90th/)で公開していますが、日本各地で、BDはもちろん、ポーラ社員が何をすべきかを考え抜いた仕事が生まれて来ているのは、すごく嬉しいことです。
--これまで何度も横手さんをインタビューしていますが、現場の変化を手放しで喜ぶ姿は初めて見ました。
横手 ポーラの考え方、思いを自主的にキャッチし、それを現場に落とし込み、独自の取り組みを企画し、周囲を巻き込みながら実行する。こうした動きを聞くと、本当に嬉しい。先日も、九州の会議に参加したら、ポーラTB事業部の鹿児島ゾーンとオルビスの鹿児島のショップが一緒になって地元で美容体験イベントをやった、と報告を受けたんです。これには驚きました。
--同じグループとはいえ、ポーラとオルビスは、これまでビジネス上の接点が少ない。意外な組み合わせですね。
横手 鹿児島ゾーンのスタッフもBDも、地元で集客力の高い化粧品イベントをやりたいと考え、ショッピングモール内のブランドに声を掛けたものの、実現のハードルは高かった。それに乗ってくれたのが、オルビス。去年の第1回が盛り上がったので、今年も第2回を実施したそうです。
ポーラとオルビスは同じグループとはいえ、化粧品ブランドとして競合している側面もありますが、鹿児島ゾーンのスタッフは「抵抗感は全然ない」と話すんです。むしろ、オルビスの接客、若年層のお客様との交流から学びがあったことから、今度は大分ゾーンがオルビスと組んだイベントを開催する、と動きが広がっています。
--地域と地域のコラボが自然に生まれ、広がり始めたことに手応えがある、と。
横手 事例があるといっても、少しずつ生まれているに過ぎませんが、手応えはあります。採用活動において内定者の声を聞くと、若手社員の個性が豊かで、自分たちの意見、アイデアで仕事を進められる、と聞いてポーラを志望したという話を聞くと、組織が少し変わり始めたことを感じます。
--一昔前のポーラの印象といえば、営業力の強さにスポットが当たりがちでしたから、ずいぶん変わりました。
横手 その意味では、すごい変わったと思いますよ。
--それでも、成果は出始めたばかりとのことですが、創業100周年を目指すポーラの課題とは。
横手 今の変化の延長線上に100周年は入っていると思います。この10年という期間で、真の意味でポーラが社会性を養い、それに適した価値を提供できるか。現代における社会的意義をポーラ社員、ショップオーナー、BDにきちんと伝え、それを分かち合えるかが鍵を握っているように思います。
--まだ道半ばですか。
横手 そうですね。まったくもって安心というレベルになってくれないと、10年後の先にある10年、つまり創業110年、120年、130年を目指す土台が築けない。これを疎かにすると、未来が大きく変わってしまうような気がします。
というのは、これからの10年はマーケティングの概念が変わる10年だと思っているからです。企業は、商品とサービスを一人でも多くのお客様に届けるマーケティングをずっとやっているわけですが、おそらく、そのような手法は、社会にも、お客様にも、響かなくなっていく。生活の余計なもの、つまり、ノイズのような存在になるのではないか。
先ほど話したように、社会の中で、地域の中で、お客様の心の中で、どうやって関係性を結ぶかが問われた時に、ポーラの中で少しずつ芽吹いていることは良いこととはいえ、それが企業活動の全体に波及しないと、BDも、社員も、お客様もポーラに集まってこないと思います。