ライオンが2019年12月期第1四半期を発表。5月10日に記者会見を開催した。売上高は前年同期比0.5%減の789億3000万円。事業利益は同6.8%減の55億6000万円、営業利益は46.9%減の59億5000万円、四半期利益は62.8%減の34億4000万円だった。

一見すると、厳しい内容だが、実情は異なる。減収要因は、18年、殺虫剤ブランド「バルサン」、100%子会社のライオンパッケージングの全株式をレックに譲渡したことに加え、マレーシアの原料子会社が連結対象から外れたこと。それぞれの影響を除いた実質増収率は1.1%増だった。

ライオンの掬川正純社長

事業利益のマイナス4億円の内訳をみると、増益要因はトータルコストダウン(原価、物流)がプラス3億円のほか、原材料価格は海外を中心に値が下がり、プラス3億円の効果があった。一方で、事業譲渡などによる売上減に加え、国内事業に比べて利益率が低い海外事業の構成比が上がったことが5億円の減益効果を与えた。

営業利益、四半期利益は、いずれも50億円超のマイナスだが、これも全四半期に固定資産の売却益があったため。実質では、わずかながらの増益基調である。

売上高と利益について、セグメント別に見ると、主力の一般用消費財は、2.0%減だが、これは殺虫剤ブランドの譲渡による影響。実質的には、0.5%の増収だった。産業用品は4.1%の減収。中国を中心としたスマートフォン用のフィルム向け粘着剤などが低調だった。減益(48.5%)要因の半分は、年初から新たに稼働した基幹システム(ライオン・スペシャリティ・ケミカルズに導入)の償却によるもの。海外は0.5%の減収だが、マレーシア子会社の影響を除くと、約5%。昨年と同じ水準の成長を維持している。

「(第1四半期は)厳しい戦いが継続しているが、計画ベースでは売上げ、利益ともにほぼ想定の範囲内で推移しています。年間の業績予想は、年初の予想を据え置きにしている」(掬川正純社長)

今期の重点施策は、量的拡大が望めない国内は高付加価値品の創出・育成を継続。コモディティ化したカテゴリーの単価アップ、未使用者層の取り込みの二点だ。例えば、同社の調べ(金額ベース)によると、ハミガキは、市場成長率を1ポイント上回るプラス5%、デンタル用品は7ポイント上回るプラス15%、ボディソープは22ポイント上回るプラス27%、解熱鎮痛剤は3ポイント上回るプラス5%、浴室用洗剤は151ポイント上回るプラス169%だった。

一方、海外は、昨年収益構造にめどがついた中国市場について、再び成長軌道に乗せることだ。青島ライオンは、システマ、クリニカの重点育成に着手。さらに重点アカウントを20に絞り込み、取扱製品の拡大と販促を強化した結果、19年12月期第1四半期の売上高は、前年同期比2割増。そして、ECと店販の販売バランスの最適化により、それぞれ二桁成長になった。青島ライオンの売上高は3割も増えている。今後は、アリババが提供するB2B流通プラットフォーム「LST」と5月中に契約する予定。LSTを利用すると、中国地方都市の家族経営の小規模店舗(パパママショップ・130万以上)に配荷が可能になる。商品供給は6月からの予定。オーラルケア中心に約10SKU、価格は5〜10元になる見込みだ。

「海外においての売上成長の重要な国として中国を捉えている。日本ブランドのメーカーである強みを最大限に活かして、インバウンドでトライアルをしていただき、帰国後にリピート需要をアウトバウンドで獲得し、その需要を中国現地生産品の購買にも結びつけていく。この流れを実現していきたい。こういったことを総合的に統括するために、越境事業推進室を3月からスタートさせた」(掬川正純社長)