中国ECプラットフォームは、一極集中から群雄割拠の時代へ。中国ECの発展を支えてきた阿里巴巴(アリババ)のトラフィック数が大幅減。牙城が揺らぎ始めている。
「国際商業オンライン」が独自に入手した資料によると、2018年1月~8月の阿里巴巴化粧品カテゴリー(メイク+スキンケア)の合計トラフィック数(淘宝+天猫)は前年同期比10・62%増の72億4782万7373。一方、17年の同じ期間は、同比25・73%増の65億5203万1289である。わずか1年で、伸長率が約15ポイントも下がったことになる。
月別(表参照)に見ると、阿里巴巴の苦戦が露わになる。18年1月は、前年同月比28•83%増の8億6461万9942と幸先の良いスタートを切ったものの、翌2月は同マイナス17・94%の6億5944万7492と惨憺たる結果に終わった。17年2月は同61・78%増の8億357万6038。前年越えには高いハードルで、仕方がない思われたが、その後も厳しい戦いが続く。
翌3月は同16・64%増の10億4581万2880と盛り返したものの、前年が28・24%増だったことを考えると物足りない結果。さらに4月は6・79%、5月は9・04%と低迷。前年の4月(27・45%増)、5月(22・78%増)は2桁台の伸びを示していたことから、中国EC業界は騒然となった。
というのは、6月は「独身の日(11月11日)」に次ぐ中国ECのビッグセールを控えていたから。阿里巴巴にとってECの最大のライバル、京東(ジンドン)は6月1~18日に「全球年中購物節618」を開催。取引額は、前年比32・8%増の1592億元(約2・7兆円)だった。
一方、阿里巴巴は6月1~20日まで「Tmall 618 Mid-year Shopping Festival」を展開。日本では「Tmall Global」における日本ブランドの売上げが3倍、ピーク時のオーダー数が平均オーダー数の600%増だったと喧伝したものの、肝心の月間トラフィック数は、同13・98%増の9億4019万5376で着地。前年同期の21・78%増に比べると、伸長率は鈍化しているといわざるを得ない。
このような阿里巴巴の状況について、中国EC業界の関係者は次にように話す。「依然として阿里巴巴の競争力は強い。だが、他のプラットフォームの成長スピードがあまりにも速く、トラフィックが分散している。まもなく、中国ECのプラットフォームは、阿里巴巴1強から群雄割拠の時代になるのではないか」
確かに、中国のiiMedia Researchが18年1月に発表した「2017年12月份中国APP活跃用户排行榜(17年の中国APPのアクティブユーザーのシェアランキング)」を見ると、阿里巴巴の牙城に挑む企業は元気が良い。
トップは「微信(WeChae)」で、シェアは96・62%。しかも2位は「QQ」で73・95%。どちらも、中国企業の中で阿里巴巴としのぎを削る騰訊(テンセント)のAPPである。さらにランキングから主要プラットフォームをピップアップすると、21位に淘宝(15・85%)、43位に拼多多(8・95%)、46位に京東(8・10%)、60位に唯品会(5・99%)、111位の小紅書(2・85%)などが続く。一方、天猫は1・05%で193位である。
また、18年7月12日にiiMedia Researchが発表した「2018上半年中国APP排行榜(APPアクティブユーザーランキング)」を見ると、6月の1位は淘宝の3億6988万6900、天猫は4位の6807万2700。2位は京東で1億7129万7800、3位は唯品会の7575万3500で、さまざまな指標がトラフィック分散を示唆している。
中国では現在、18年の「独身の日」に向けてEC業界の動きが活発になっている。昨年は阿里巴巴が1682億元、京東が1271億元だったが、今年は阿里巴巴が突き放すのか、京東が差を縮めるのか。それとも、7月26日、創業からわずか3年で新規株式公開(IPO)した拼多多が存在感を示すのか。18年の「独身の日」は、中国EC市場のターニングポイントになる可能性がある。