牛乳石鹼共進社は9月11日、長年培ってきた石けん製造技術の発展、数値化、有効性の観測を進める中で、石けん素地による肌へのアプローチにおける新たな可能性を見いだし、新たな研究知見を発表した。
同社は創業以来117年にわたり、清潔で健やかな肌を「美肌」と定義して製品開発を行ってきた。近年では、皮膚表面の常在菌バランスが肌状態に及ぼす影響が明らかになりつつある。表皮ブドウ球菌に代表される善玉菌は肌のバリア機能維持や潤い保持を担う一方、黄色ブドウ球菌などの悪玉菌はアトピー性皮膚炎の悪化に関与する。こうした背景から、単なる汚れの除去にとどまらず、皮膚常在菌層への作用という観点から石けん素地の新たな可能性を検証するに至った。
石けん製造の乾燥工程で得られる「石けん素地」およびその構成成分である脂肪酸ナトリウムに着目し、洗浄行為を想定した評価を実施した。評価サンプルには牛脂由来の石けん素地等を使用し、対象菌として表皮ブドウ球菌(善玉菌)と黄色ブドウ球菌(悪玉菌)を選定。サンプルと菌を5分間混合した直後の殺菌性を比較評価した。
その結果、油脂の組成によって常在菌への殺菌性に明確な差が見られた。牛脂・パーム油をベースとした石けん素地は、善玉菌への殺菌性が低い一方で悪玉菌を優先的に殺菌する傾向が示された。対照的に、ヤシ油・パーム核油をベースとした石けん素地は、善玉菌・悪玉菌の両者に対して高い殺菌性を有する傾向が示された。構成成分である脂肪酸ナトリウム単体での検証においても、牛脂に豊富なオレイン酸ナトリウムは選択的殺菌性を示し、ヤシ油に豊富なラウリン酸ナトリウムは両方の菌を殺菌する傾向が確認された。
この研究結果から、石けん素地の殺菌特性は、原料となる油脂の脂肪酸組成、特に含まれる脂肪酸ナトリウムの種類に強く依存することが示唆された。オレイン酸ナトリウムの存在が悪玉菌に対する優先的な殺菌性に関与していると考えられる。これにより、石けんは単なる洗浄剤ではなく、脂肪酸組成を適切に設計することで特定の菌を選択的に制御する機能性成分として応用できる可能性が示された。
この研究で得られた知見に基づき、牛乳石鹼共進社では皮膚常在菌との共存を意識した製品開発を進める。その一例では、藤田医科大学病院との共同研究を実施中である。軽度のアトピー性皮膚炎患者約50名を対象に、殺菌特性の異なる石けんを長期連用した際の皮膚常在菌叢への影響について検証を行い、臨床データに基づく製品開発と社会還元を目指す。★
月刊『国際商業』2026年11月号掲載

























