クラシエ(ホームプロダクツカンパニー、ウェルビーイングリサーチセンター)は、シナレンギョウの葉/茎を基原とする植物抽出物の化粧品用途における産業利用に世界で初めて成功、毛髪および皮膚のうるおい改善効果を見いだした。

シナレンギョウ(Forsythia viridissima)は庭木や公園木、街路樹として広く国内で分布している植物だ。東洋医学において「連翹(れんぎょう)」の乾燥果実は、生薬として消炎・利尿・排膿・解毒に用いられ、荊芥連翹湯(けいがいれんぎょうとう)、防風通聖散(ぼうふうつうしょうさん)等を構成している。これまでに同社では2005年から植物ポリフェノール(アルクチゲニン)に関連する研究に着手し、約20年の歳月をかけてアルクチゲニンの機能性に関わる基礎研究を実施してきた。その結果、22年にはアルクチゲニンが豊富に含まれるゴボウスプラウト、及び、シナレンギョウに関する広報発表を行い、内服による睡眠改善、疲労軽減、悪玉コレステロール抑制効果等、生活習慣病予防、QOL改善効果を明らかにしてきた。

シナレンギョウは日本国内で幅広く生育しているものの、まとまった量を入手して産業利用することはできなかった。そこで同社は専用のシナレンギョウ栽培農場を確保し、栽培、茎葉の収穫方法を確立。世界で初めて産業利用可能なシナレンギョウの化粧品原料を開発、製品応用に成功した。

今回、身体と心を健やかに保つために独自に継続してきた生薬研究を応用し、化粧品に適用するべく、シナレンギョウの毛髪および皮膚に対する作用を検討した。毛髪および皮膚にとって健康な状態でいるために水分は必須であり、香粧品学的な観点からみると水分に対する反応のしやすさは、各種物性や外観におけるさまざまな変化として現れる。また、人の体は「気(き)」「血(けつ)」「水(すい)」の三つで構成されるとする漢方の考え方としても、水分は非常に重要な成分であると言える。そこで今回は、毛髪および皮膚の水分状態にフォーカスして評価を行い、特長を見いだした。

シナレンギョウ①

シナレンギョウ②

●毛髪評価

(1)毛髪内部の水分挙動測定-シナレンギョウ葉/茎エキスは水分保持機能を向上させる

毛髪内部の水分挙動を評価することは重要であり、例えば外部から水分が浸透しやすいとヘアスタイルが崩れる原因となり、逆に水分が蒸散しやすいとパサつきを感じやすくなる。すなわち、外部からの水分に過剰に反応することなく、水分を緩やかに吸収し、時間をかけて余分な水分を蒸散させる機能を持つ毛髪は、健康であると言える。そこで、30代の日本人女性の毛髪を採取し、ダメージ処理を行った毛髪における毛髪内部の水分挙動について、顕微赤外分光分析を用いて比較した。

その結果、未処理毛と比較してダメージ処理を与えた毛髪では、水分が内部に急激に浸透したが、乾燥工程では水分が急激に蒸散し、結果的に未処理毛と比較して1時間ほど早く外部から浸透した水分が無くなった。一方で、ダメージ処理毛にレンギョウエキスを処理させた群は、ダメージ処理毛と比較して、未処理毛と同様の緩やかな水分浸透および蒸散挙動を示し、特に乾燥後1時間以降で有意に水分量が高いことが確認できた。以上より、シナレンギョウ葉/茎エキスはダメージ処理毛が失った、水分保持能を改善させることが明らかになった(図1)。

図1:レンギョウ葉/茎エキスの水分保持機能向上効果

(2)毛髪表面のキューティクル剥離性評価-シナレンギョウ葉/茎エキスはキューティクル剥離を予防する

30代の日本人女性の毛髪を採取し、キューティクル剝離試験を行った結果、洗髪によるキューティクルの脱落が改善することが示唆された(図2)。

図2:レンギョウ葉/茎エキスのキューティクル剝離予防効果

これらの結果より、レンギョウ葉/茎エキスは、キューティクル剝離を予防し、水分保持能を高めることで、毛髪の保湿を向上させる効果があることが分かった。

●皮膚評価

(1) タイトジャンクション関連タンパク質の局在および発現変動

皮膚の水分を適切に維持するためには皮膚のバリア機能が重要だ。そこで、細胞間の隙間を密着させることで、体内の水分蒸発や外部からの異物侵入を防ぐ機能を有するタイトジャンクションについて、ヒト皮膚表皮細胞を用いてその形成を促進する因子であるClaudin-1およびOcculdinの発現量を評価した。その結果、シナレンギョウ葉/茎エキスを処理していないコントロール群と比べて、エキスレンギョウ葉/茎エキスは両因子の発現量を増加させ、その増加した部分は細胞の外周付近に局在していることが明らかとなった(図3)。

図3:シナレンギョウ葉/茎エキスによるタイトジャンクション関連タンパク質の局在と発現変動評価

さらに、シナレンギョウ葉/茎エキスの濃度を変えた場合の両因子の発現量の変動を解析した結果、Claudin-1およびOcculdinは、それぞれ100μg/mLおよび10μg/mL添加で有意な増加が確認された(図4)。

図4:シナレンギョウ葉/茎エキス処理濃度を変えた場合のタイトジャンクション関連タンパク質の発現増加

(2)皮膚バリア機能の解析-シナレンギョウ葉/茎エキスは皮膚バリア機能を向上させる

タイトジャンクション関連タンパク質がシナレンギョウ葉/茎エキスにより発現が増加したため、皮膚バリア機能が向上したと考えられる。そこで、皮膚の表皮を構成する細胞であるケラチノサイトを用いて、TEER(Transepithelial/Transendothelial Electrical Resistance;経上皮/経内皮電気抵抗)測定を行った。その結果、シナレンギョウ葉/茎エキスは濃度依存的にΩ·cm²の数値が上昇させることが明らかになった(図5)。その数値上昇は、皮膚バリア機能が強化されたことによると考えられる。

図5:シナレンギョウ葉/茎エキスの処理濃度を変えた場合における皮膚バリア機能向上効果