キリンホールディングス(以下、キリン)が、ヘルスサイエンス事業の領域を「飲む・食べる」から「測る・知る」へ広げる。その第1弾として、呼気から自分の代謝状況を可視化するイスラエル発ウェルネスデバイス「Lumen(ルーメン)」(本体+1年間のアプリ使用料、3万4800~4万9800円)を9月30日に応援購入サービス「Makuake(マクアケ)」で先行発売する。初年度の販売目標は5000台。Makuakeを通じての購入者の反応や利用実態、市場性を検証し、一般販売の時期や販売形態を見極める計画だ。
- 呼気から代謝状態を可視化する「ルーメン」
Lumenは、約30秒の呼気測定で呼気中の二酸化炭素(CO₂)濃度などを測り、独自のアルゴリズムで解析することで、身体が糖質と脂質のどちらを主なエネルギー源としているかなど代謝状態を捉え、食事や運動など次の健康行動につなげるデバイス。結果は独自指標「Lumen Level」の1~5で表示する。数値の高低で健康状態の良し悪しを判定するものではなく、食事や運動、休息などによって変化するエネルギー源の利用傾向を捉えるための指標と位置づける。
使い方は専用アプリの案内に従ってデバイスを使って呼吸を行うのみ。日々の測定を食事や運動と照らし合わせることで、自身の行動と代謝状態の関係を振り返ることができる。アプリでは健康目標や測定結果を踏まえ、糖質、タンパク質、脂質の摂取バランスや食事、運動なども提案する。例えば、その日の状態によって糖質を多めに取ることを勧めたり、運動内容を踏まえて食事を提案したりするなど、一律の健康情報ではなく個々の状態に応じた行動のヒントを示す。

左から、キリンホールディングスヘルスサイエンス経営企画部新事業開拓室の金子裕司技術士、「ルーメン」をいち早く体感したモデルの福田萌子、キリンホールディングスヘルスサイエンス経営企画部新事業開拓室の津川翔室長
キリンが重視するのは、代謝を可視化すること自体ではなく、その結果を行動変容につなげることだ。日本投入に先立ち、ホームユーステストに加え、数千人規模のウェブ調査や実地調査を実施。健康のために食事や運動に取り組んでいても、それが「自分にとって正しいのか分からない」と感じる層が一定数存在することが分かった。「代謝状態を測り、その変化に基づいて次の行動を提案する仕組みに価値を感じる消費者が確認できたことが、事業化を判断する材料になった」(キリンホールディングスヘルスサイエンス経営企画部新事業開拓室の金子裕司技術士)という。
CVC投資から初の本格事業化
Lumenは、キリンにとって新事業創出の仕組みを具体化した案件でもある。同社は2020年からCVC(コーポレートベンチャーキャピタル)活動を進め、現在は「キリンベンチャーズ」としてグローバルでスタートアップの探索、投資から協業創出までを推進。年間約1000社を評価し、これまでに累計50社へ出資してきた。その半数以上でキリングループとの協業や事業開発を検証しており、Lumenはそこから本格事業化まで進んだ初のケースとなる。
キリンは23年、Lumenを開発するMeta Flow(メタフロー)に出資。その後、技術の可能性やキリンとの親和性、日本市場での事業性を検証し、国内販売権を取得した。海外製品を単純に輸入販売するのではなく、出資後の協業を通じて日本での事業化までつなげた点に特徴がある。
背景には、ヘルスサイエンス事業を次の成長ステージへ移す狙いがある。キリンは19年に、酒類・飲料の「食」と医薬に続く成長領域としてヘルスサイエンス事業を本格始動した。発酵・バイオ技術を基盤に、プラズマ乳酸菌などの独自素材に加え、Blackmores(ブラックモアズ)やファンケルのグループ化を通じて事業基盤を拡大。25年には同事業の黒字化を実現した。既存事業を伸ばす一方、デジタルを活用したデバイスや検査、個別化サービスなど、飲料やサプリメントの周辺にある新たな健康ソリューションの開拓を進めている。Lumenによって、これまでの「飲む・食べる」に身体の状態を「測る・知る」という接点を加える。
キリンホールディングスヘルスサイエンス経営企画部新事業開拓室の津川翔室長は、将来的に「Lumenとキリンが現在展開する飲料や食品、サプリメントなど『飲む・食べる』領域とのシナジーも図る」ことを視野に入れる。Lumenで身体の状態を把握して健康行動を促し、その先に残る健康課題に対して食品やサプリメント、飲料などのソリューションを提供する。具体策は決まっていないが、キリンはLumen単体の事業性を見極めながら、既存事業とつなぐ可能性も探っていく。























