ACROが展開し、2023年に事業を終了したラグジュアリーオーガニックブランド「ITRIM(イトリン)」が約3年ぶりに再始動する。ACROからブランドを継承したITRIM JAPAN(イトリンジャパン)が、年内をめどに新生「イトリン」の展開を始める。同社はイトリンに加え、オーガニックブランド「IDOQUEIDO(イドケイド)」も展開。日本各地の生産者や企業との協業を通じ、日本の技術力やものづくりの精神を生かした商品開発を推進する。
イトリンは2018年9月、ACROの創業10周年の節目に誕生した。同時期に立ち上げた「Amplitude(アンプリチュード)」「FIVEISM × THREE(ファイブイズム バイ スリー)」とともに、同社の新たな成長を担うブランドとしてスタート。日本古来の植物などに着目し、伝統的な知恵と現代の美容知見を掛け合わせながら、「結果を大切にする」化粧品を掲げた。デビュー時からフェイス、ボディ、ヘアケアまでをそろえ、顔、体、髪を包括的に捉えるブランドとして独自のポジションを築いた。

ACROの宮﨑稔章社長
ACROは複数ブランドを並行して育成する中、コロナ禍も重なって経営資源の配分が難しくなり、23年にイトリンの事業を終了した。同社の宮﨑稔章社長は「当時からブランドの存続に向けて継承の可能性を探っていた」と振り返る。

ITRIM JAPANの吉川雅之代表取締役
その受け皿となったのがITRIM JAPANだ。同社はイトリンのブランド継承を機に、24年2月に法人化した。薬学博士で、代表取締役を務める吉川雅之氏は、旧イトリンのプロジェクトにも関わっていた人物だ。「イトリンプロジェクトがスタートして以来、生薬や天然物を担当するリサーチャーとして、プロジェクトの開発フローに参画していた」と説明する。宮﨑社長によると、「イトリンをよく理解する人物が手を挙げたことが商標譲渡につながった」という。

オークラ東京の一部の特別室では休止中も継続してアメニティとして展開していた
新生イトリンでも、植物が持つ力を引き出し、確かな商品価値へと結び付ける考え方を重視する。生薬や天然物の研究に携わってきた吉川代表は、和漢薬をはじめとした知見と、機能性や安全性に関するエビデンスを基盤に「使用実感のある化粧品」を開発していく考えを示す。その先に見据えるのが海外市場で、「ITRIMがグローバルなオーガニックブランドに成長することを目指している」と意欲を示す。
ITRIM JAPANが掲げるのは、日本が誇る卓越した技術力や繊細な感受性、独自の美意識を基盤に、日本のものづくりの精神を品位と品質へ昇華させたオーガニックプロダクトの製造・販売だ。新生イトリンは、世界の伝統医学と現代科学を融合し、高い機能性と心地よい使用感の両立を目指すラグジュアリーオーガニック化粧品ブランドと位置付ける。
ブランド名に込めた思想も受け継ぐ。古語で「非常に」を意味する「いと」と、内なる美しさを秘めた気高い佇まいを表す「凛」を掛け合わせた名称で、「いと、凛と生きる。」を掲げる。旧イトリンが大切にしてきた植物へのアプローチやブランドの思想を踏まえながら、年内をめどに新たな製品を市場へ送り出す。
日本各地の「思いを形に」する協業も
もう一つのブランド、イドケイドでは、日本各地の生産者や企業との協業を進める。ブランド名は「緯度と経度」に由来し、多様な歴史や文化を背景に、天然素材を余すことなく生かしながら持続可能なものづくりを目指す。
ITRIM JAPANの清水俊輔総括製造販売責任者は「日本各地には、良質なものづくりに心を注ぎ続けている生産者が多くいる」と説明。長年培ってきた生産者や企業の思いを未来へつなぐため、コラボレーションを推進する。領域は化粧品だけにとどまらず、ヘアサロン「aleeza Hairsalon Tokyo(アリーザ ヘアサロン トーキョー)」とも協業し、サロン専用のシャンプーやコンディショナー、ヘアオイルなどを開発。ヘッドスパサロン「aleeza Head Spa Osaka(アリーザ ヘッドスパ 大阪)」とは、健やかな髪は健やかな頭皮から生まれるという考えをベースに、施術メニューや頭皮用アイテムも構築する。

NONO CREATIONとのコラボ製品
このほか、地域に根差した植物や未利用資源にも着目。北沢食品工場とは夕張メロンの未利用部位を活用し、化粧品原料やキャンドルを展開。NONO CREATIONとは、与那国コーラルを軸にしたサプリメントをそろえ、メディアドゥでは創業30周年記念で非売品のオードトワレとキャンドルを開発した。
ITRIM JAPANはこうした協業を広げる一方、事業の中核となるイトリンの展開に向けて準備を進める。約3年の空白を経て、旧ブランドが培った思想や価値を受け継ぎながら、新生イトリンの挑戦が始まる。
月刊『国際商業』2026年11月号掲載






















