ロート製薬は、2030年の総合経営ビジョン「Connect for Well-being & Longevity」のもと、ロンジェビティ研究を推進し、肌の健康長寿に貢献する研究を進めている。その最新知見が、独自開発したペプチド化セクレトーム「ステムCM」と細胞老化抑制因子「miR-R」の発見だ。6月17日に「細胞研究から紐解くスキンケア最前線セッション」を開催し、研究の有効性を共有した。
近年の猛暑日や熱帯夜の増加など、気候変動に伴う環境の変化を背景に、肌は紫外線や乾燥、大気汚染に加え、「熱」という新たな環境ストレスにもさらされるようになっている。こうした中、スキンケア分野でも熱が肌に及ぼす影響への関心が高まっており、高温環境への長期曝露が皮膚の炎症を促進する可能性が報告されている。ロート製薬は、この現象を「熱老化」として捉え、そのメカニズムの解明と対策技術の研究を進めている。
同社は、再生医療研究の知見をもとに独自開発した「ステムCM」に着目し、熱ストレスによる皮膚への影響について研究を進めてきた。ステムCMはヒト脂肪由来間葉系間質細胞の培養上清(セクレトーム)を独自の酵素技術で低分子ペプチド化したスキンケア原料であり、品質管理、安全性評価、成分解析および作用検証を行っている。培養上清中の生理活性物質を低分子化することで、スキンケア素材としての活用を目指して開発した。
ステムCMはデータサイエンス研究による網羅成分解析により、565種類のペプチドを同定しており、多様な成分が複合的に働くことで皮膚へ多面的な作用をもたらすと考えられている。熱ストレスによる皮膚ダメージに対しても、炎症関連遺伝子の発現抑制、DNA損傷応答の抑制、細胞増殖低下の改善、老化関連変化の抑制など、多面的に働きかける可能性が示された。同社データサイエンス推進室の羽賀雅俊リーダーは「ステムCMは、安全性、品質、有効性を三位一体で満たした再生医療コスメとしての価値を示す素材。データサイエンスによって多様な成分構成が明らかになり、皮膚のすべての層にアプローチするマルチな効果を示すことが分かってきた」と説明し、再生医療由来素材としての信頼性とエビデンスの蓄積に自信を示した。
さらに再生医療分野の幹細胞研究から着想を得て、エクソソームなど細胞外小胞に含まれる約2500種類のマイクロRNAを解析し、細胞老化を抑制する新因子「miR-R(ミアアール)」を発見した。老化した線維芽細胞では、炎症や酸化ストレスなど複数の老化関連シグナルを抑制することを確認。さらに約300種類の植物エキスから、脂肪幹細胞や細胞外小胞内のmiR-Rを増加させる「ステムEVコンプレックス」を開発し、細胞外小胞の質を高める新たなアプローチを提案した。
同社基盤技術研究部皮膚系研究グループの桑野明香里研究員は、「これまでの技術が細胞外小胞の分泌や取り込みを高めるアプローチだったのに対し、今回は細胞外小胞の質を高める技術へと進化した。スキンケアの未来を切り開く技術になると考えている」と語った。
ロート製薬はステムCMやmiR-Rを単なる再生医療由来素材としてではなく、品質・安全性・有効性を科学的に説明できるスキンケア原料として研究を深化させていく。今後もロンジェビティ研究を推進し、皮膚細胞のストレス耐性や健やかさを支える研究を進め、環境変化に適応した次世代のスキンケア価値創出を目指す。




















