ポーラ・オルビスグループの研究・開発・生産を担うポーラ化成工業は、疲れた印象に繋がる「加齢に伴う目袋(下まぶたのたるみ・ふくらみ)」に関する研究を行い、

①下まぶたを支えるRetinacula cutis(RC、※1)が加齢に伴い、密度が低下、細くなり、下垂していくこと

②筋肉由来因子「イリシン」が、RCの主要タンパク質の産生を促進する

③ヘリクリスムイタリクムとセイヨウノコギリソウの複合エキスがイリシンの発現を高める

の3点を発見した。

同研究で得られた、下まぶたのたるみ・ふくらみとRC・眼輪筋の関係性に関する新たな知見について、9月9~12日に開催されるThe 55th Annual ESDR(European Society for Dermatological Research)Meetingで発表予定となっている。

下まぶたは皮膚が薄く、目を動かす眼輪筋や、目の周りの脂肪(眼窩脂肪)が存在するなど特徴的な構造を有している。下まぶたの眼輪筋によって形成されるふくらみである「涙袋」は一般に、涙袋は目元に立体感や若々しい印象を与える要素として認識されている。一方、「目袋」は、涙袋の下にできる目の下のふくらみで、眼球を保護する眼窩脂肪が加齢に伴い前方に突出すること、皮膚がたるむことで生じる(図3)。目袋は疲れた印象や老けた印象につながるため、深刻な加齢悩みの一つとなっている。

同社では、長年にわたり、皮下組織を支えるRCや目のまわりに輪状に発達し、目のたるみやくぼみにも関連する眼輪筋(図4)について研究してきた。これまでに、頬のたるみを引き起こす一因は加齢に伴うRCの脆弱化にあることを明らかにした。

これらを踏まえ、これまで見た目の変化として語られることの多かった目袋について、組織構造と生体因子の両面から原因に迫った。

目袋の原因の一つとして、加齢による下まぶたのたるみが考えられている。そこで、下まぶたでも頬と同様にRC構造の脆弱化が生じていると考え、RCの密度、平均の太さ、線維の向き(配向角度)に着目してその加齢変化を画像解析により定量的に調べた(図1)。20~90代の下まぶたの組織断面を染色し構造を比べると、加齢に伴いRCの密度が低下し、細くなっていることが分かった(図5)。

また、20代では水平方向に走っていたRCが、加齢に伴い下向きに垂れ下がっていた。これにより、RCが弱くなり、皮下組織を支える機能が低下している可能性が示唆された。

目袋は下まぶたの皮膚のたるみ、ふくらみが関連するため、RCの脆弱化と眼窩脂肪のせり出しの双方へのアプローチにより、目袋の解決に貢献できると考えた。そこで着目したのが、皮下組織と眼窩脂肪に挟まれるように存在する筋肉、「眼輪筋」だ。今回、筋肉から産生される「イリシン」にRCを構成するタンパク質の産生を増やす効果があることを発見した。これはRCの構成タンパク質を産生する腱細胞(※2)にイリシンを添加した結果、RCの主要構成タンパク質であるコラーゲンⅠとRCを束ねるタンパク質であるMFAP4の産生を高める効果があることが分かった(図6)。

「イリシン」には脂肪細胞の引き締め効果があることが知られており、眼窩脂肪のせり出しへの効果も期待できる。

筋由来の細胞を用いた実験でイリシンの発現を高めるエキスを探索したところ、ヘリクリスムイタリクムとセイヨウノコギリソウから抽出した複合エキスに効果があることを突き止めた(図7)。

イリシンは筋活動に伴い産生されることが知られている。本来、下まぶたは、瞬きや表情変化により絶えず動き続ける部位だが、現代人ではデジタルデバイス使用により目元を動かす機会が減っていると言われている。また、イリシンは加齢で産生量が減ることが知られており、筋のイリシン産生を促進することができれば、RCの構造強化と眼窩脂肪の引き締め作用による「加齢に伴う目袋へのアプローチ」が可能になり、目元の疲れた印象や老けた印象の改善も期待される(図2)。

※1皮膚支持帯。皮下組織にある線維構造で、肌が下垂しないよう支える役目を持つ

※2RCを構成する主要な細胞の一つであり、細胞外基質成分の合成や分解を行い、RCを維持・構築する役割を持つ